「LADYPEAK」#19
LADYPEAK服用後の春江と和代、そして桃葉の三人は、新幹線の指定座席に並んで座っていた。窓の外では、無音の夕暮れと色褪せた風景が流れていく。
周りの乗客に迷惑がかからないように、声のボリュームを抑えて、会話を楽しんでいた。美しく華やかな三人の姿は、通路を通る者たちの視線を集める。
「ねえねえ、お姉さんたち。どこまで行くの?」
大学生風の若い男が、いかにも軽い様子で話しかけてきた。後ろにいる二人の若い男も、似たような身なりだ。なれなれしい笑い顔で、春江たちを見ている。
「今日は、何かあるのかしら?あなたたちで七回目よ。その質問してきたの」
和代が圧倒的な視線とともに答えると、男たちは無言でその場を去って行った。
春江と和代が、初めてLADYPEAKを実感したあの日。
白い部屋では、三人のLADYが、奇跡と友情に浮かれていた。
「あっ、そうだ。和代、春江、これを見て」
桃葉は、赤いスマートフォンを取り出して画面を二人に見せた。
「!!」
「これって・・・」
春江と和代は、同時に驚いた表情になった。画面に二人の女が映し出されている。
ここに来る途中、ガールズブティックの前で、桃葉が二人を撮影したものだ。しかし、画面の中の春江と和代は、“今“の姿で立っている。
「LADYPEAK服用後の姿を予測するソフトを作ったの。思った以上に、正確な予測結果で驚いたわ」
桃葉はニコニコしながら、話を続けた。
「決めた!わたし、あなたたちについていくわ。LADYPEAKの研究に、何か役立つデータがとれるかもしれないし」
「ホント!?じゃあ、わたしの家に泊まりなよ。ね?」
春江は、胸の前で両手をあわせて、桃葉に眩しい笑顔を向けた。隣にいる和代も、納得の表情でほほえんでいる。
この日、春江と和代は桃葉とともに、予約していたところとは別のホテルに泊まった。実年齢とかけ離れすぎた見た目の状態で、ホテルのチェックインなどの手続きをするには、なにかと問題があるからだ。

