「水色のエミリア」第十五話
今朝の朝食は、僕が用意することにした。
野菜とウインナーが、フライパンの上で動きまわる。火力が足りない。
「エミリア、もう少し強くして」
「はあい。これくらいでいい?」
ソファーに腰掛けているエミリアが、テレビを見ながら、僕の前にあるガスコンロを指差す。ほとんど色をなくした指先から、小さな青い炎が現れた。炎はゆらゆらと空中を移動して、フライパンの下にたどり着いて、そこにあった炎と合流した。
僕は、高校を卒業後、一人暮らしをはじめた。今は、エミリアと一緒に暮らしている。二人で住むこの部屋から僕が通う大学までは、歩いて十五分ぐらいだ。大学では、地球の環境問題について研究する学部を専攻した。この前に書いた論文が、新聞社が主催するコンクールで大賞をもらっていた。
「ダイスケは、将来、すっごく偉い学者さんになって、この星を救う英雄になるんだよ」
エミリアがニコニコ笑いながら、そう教えてくれたが、僕は半分以上信用していない。ただ、エミリアが綺麗だと感じるものが、自分たちのせいで、形や色を変えたり、なくなっていくのは嫌だった。僕の力で、どれだけのことができるのかわからない。一つだけ言えることは、僕自身が、エミリアのために、いつまでもエミリアが綺麗だと言ってくれる世界にしたいということだ。
この世界は、まだ、こんなにも綺麗だ。
あの日、エミリアはエ・サマンサ・ギガレアントから“真なる命“を受け取った。完全な魔女になったエミリアは、他の魔女全員の力を合わせた以上の、とてつもなく大きな力を手に入れた。
エミリアは、いわゆる「突然変異」の魔女だった。エミリア自身、そのことを薄々わかっていたそうだ。レ・フーラ・フーレアントも、なんとなく気付いていたようだ。
魔女の世界は、強大な力を持った一人の魔女によって統治される。それは、ずっと昔から続いてきた“絶対“のものだったが、突然変異が強大な力を手に入れたことにより“絶対“でなくなった。
エミリアは、エ・サマンサ・ギガレアントの力を奪い、自らの強大すぎる力を“放棄“した。その瞬間、女王を正当に継承する証である「ギガレアント」の称号は消滅した。
「今ごろ、魔女の世界は、誰が女王になるかで、盛り上がってるわよ。みんな、同じぐらいの強さだから、楽しいことになっていると思うわ。でも、多分、フーフーが女王になっちゃうかな?あっ、そうだ。神や悪魔にも、このことを教えてあげなくっちゃ。あいつら、魔女のこと、イイように思っていないからね。うわあ、おもしろくなりそう!」
本当に楽しそうに笑いながら、エミリアは僕に話してくれた。神さまや悪魔が、魔女に対して好印象でないのは、エミリアのせいだということを、本人は知らない。
強大すぎた力は、エミリアの中に少しだけ残ってしまった。でも、それも、だんだん失われつつある。魔法を使うたびに、エミリアの水色はどんどん薄くなって、今ではほとんど色をなくしている。
「ねえ・・・。今日も、お話してよ」
顔の半分まで布団を被ったエミリアが、僕にお願いしてくる。エミリアは、床の上に敷いた布団で寝るのが好きだった。僕は、自分が寝ていたベッドから降りる。
「おじゃまします」
二人だと、お互いの体の一部が、布団からはみでてしまう。僕たちは抱き合って、はみでている面積を少しでも小さくしようとする。
【お知らせ】
次回、「水色のエミリア」最終回です。
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