龍宮の乙姫が龍灯を捧げる特別な日:紀三井寺千日詣 紀三井寺(きみいでら)で行われる「千日詣(せんにちまいり)」という特別な行事について、お話しします。2024年の現在も続いているこの行事は、長い歴史と深い意味を持っています。

紀三井寺千日詣とは?

千日詣は、和歌山県にある紀三井寺で毎年8月9日に行われる特別なお祭りです。この日一日だけお寺にお参りすることで、まるで千日間お参りしたのと同じくらいのご利益(ごりやく)があると言われています。ご利益とは、仏様や神様からいただく良いことや幸せのことです。

龍宮乙姫龍灯献上行脚

この行事のメインイベントは、夜の8時から行われる「龍宮乙姫(りゅうぐうおとひめ)龍灯献上行脚(りゅうとうけんじょうあんぎゃ)」です。これは、乙姫様が龍宮城(りゅうぐうじょう)という海の中のお城から、特別な灯りを持ってくるお祭りです。この灯りは「龍灯(りゅうとう)」と呼ばれ、海の中でも消えないとされています。 乙姫様は、女官(にょかん)と呼ばれるお付きの女性たちを連れて、紀三井寺の仏殿(ぶつでん)から本堂(ほんどう)までの石段を登ります。行列の先頭を行く人は「龍宮乙姫、龍灯献上、一日千日、福徳招来(ふくとくしょうらい)!」と叫びながら、乙姫様が来たことをお知らせします。この声を聞くと、参拝者たちは幸せが訪れると信じられています。

福棒投げ

夜の8時半頃からは「福棒投げ(ふくぼうなげ)」が行われます。これは、「福壽来(ふくじゅらい)」と書かれた特別な棒を投げるイベントです。棒を拾った人には、福(しあわせ)がもたらされると言われています。この福棒投げは、みんなが楽しみにしているイベントの一つです。

千日詣の由来

紀三井寺の千日詣には、1250年以上の歴史があります。このお寺は、唐の国からやってきた為光上人(いこうしょうにん)というお坊さんによって開かれました。為光上人は、紀三井寺で仏法が栄えるように願い、大般若経(だいはんにゃきょう)という長いお経を書き写しました。 その大きな功徳(こうとく)が満行(まんぎょう)したとき、どこからともなく美しい乙女が現れました。その乙女は、自分が龍宮の乙姫であることを明かし、こう言いました。 「お上人様、私は龍宮の乙姫です。長い間、私たち龍宮の民は、あなたのような徳の高いお坊様が、この名草の地に観音様の霊場を建立されるのを待っていました。今日、8月9日はその願いが果たされた喜びの日です。毎年この日には、龍宮から海の中でも消えない龍灯を献上しに参ります。」 乙姫はそう言い終えると、龍の背中に乗り、紀三井寺の清浄水(せいじょうすい)のあたりで姿を消しました。それ以来、毎年8月9日の朝早く、和歌の浦から紀三井寺を望むと、本堂の左上に灯りが灯ると伝えられています。この灯りは、心の美しい人だけが見ることができると言われています。 そして、この特別な日は、一日のお参りで千日分の功徳が得られる日となりました。

まとめ

紀三井寺の千日詣は、長い歴史と深い意味を持つ行事です。乙姫様が龍宮城から特別な灯りを持ってくることで、参拝者に幸せをもたらします。また、一日だけのお参りで千日分のご利益が得られるこの日は、多くの人々が訪れます。 この行事を通じて、私たちは約束を守ることの大切さや感謝の気持ちを学ぶことができます。乙姫様が龍灯を捧げる姿を見ることで、自分たちも誰かのために何かを捧げることの大切さを感じることができるでしょう。 2024年も、この伝統的な行事が続き、多くの人々に喜びと幸せをもたらすことを願っています。紀三井寺を訪れる際には、この伝説と共に、歴史と文化の重みを感じてみてください。そして、日々の生活の中で、感謝の気持ちを忘れずに過ごしていきましょう。