夏は海でしょう!と、今年はじめての野々島へ渡る。復興市場で仕入れた新鮮な魚介類を料理して(ゴメさんが)、それではシャブリから…乾杯!とグラスを空に掲げると、そこには一筋のひこうきぐもが…映画のワンシーンのような、そんなロケーションに酔わないわけないでしょう。その代償で携帯を水没させてしまった。併せて、パソコンの充電器も壊れてしまい、暫くの間、無人島暮らしのような生活。子供の頃の夏休みのような開放感はあったが、一端の大人なわけで、お店を構えているわけで、今日こそお迎えが来ると言ってる母を抱えているわけで…漸く修理から戻り、いつもの縛りも戻ってきた。いろいろご迷惑おかけしました。
このところ、お店は映画「風立ちぬ」の感想発表会の場と化す。ご覧になった内田先生のブログには、「戦前の日本の風土と、人々がその中で生きていた時間」のことが書かれていた。宮崎が描きたかったのは、私たち現代人がもう感知することのできない、あのゆったりとした「時間の流れ」そのものではなかったのか、と。流す涙のわけは人それぞれであるが。
この作品のキャッチコピーは、「生きねば。」もののけ姫のキャッチコピーが「生きろ。」だったと記憶するが、この微妙な差が「覚悟」ということなのではないかという気もする。ここ数年で父や大切な人を失った私には、最後に流れるユーミンのひこうきぐも、あの懐かしきメロディーが、ひとり生き抜くことへの勇気と覚悟を与えてくれた。また、公式ポスターに書かれている「堀越二郎と堀辰雄に敬意を表して」小説風立ちぬの著者、堀辰雄と零戦の設計技師、堀越二郎をドッキングさせたらどんなお話になるだろう、という発想から作品作りが始まった宮崎駿さんのお陰で、あの頃の日本の風を感じることができたように思う。

世の中はお盆休み。昨晩は、里帰りした仲間と共に迎え火を焚き、今日は、ゴメさんお薦めの、泉にある京懐石「小豆」で豪華ランチを頂きながら故人を偲ぶ。先週末の島での酒宴とは真逆の、それは見事に完成された静かな京料理。できることなら、一緒に味わいたかった…。私にはまだ覚悟が足りない。まだ、時間が必要なようだ。