日曜日、アイラの巨匠アードベックを小瓶に入れ、バックに忍ばせて、ひとり松島へ。

村上春樹の著書「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」は、作家である村上さんと、夫人で写真家の陽子さんがアイルランドとスコットランドを旅するお話。その中で、「アードベックはアイラのピーティなシングルモルト中でも、一番個性が強い」と評価しているシングルモルトである。村上春樹は、この世の中には静かに語りかけることでしか伝わらないモノがあるということを、ウィスキーに託して語っている。人の心の中にしか残らないもの、だからこそ何よりも貴重なものを、旅は僕らに与えてくれる。そのときには気づかなくても、あとでそれと知ることとなるものを。もしそうでなかったら、いったい誰が旅行なんかするだろう?(あとがきより)また、陽子夫人の写真が素敵で、自分も一緒にアイラを旅しているような気分にもなる。そういえば、ウィスキー評論家のマイケル・ジャクソン氏も、最も訪れる価値のある美しい蒸留所と評していた。
私の店のお客様は、店主をはじめ?非常に個性の強い方ばかりで、この強烈なアイラのウィスキーを好む。6年前に天国へ旅立った松尾ちゃんはラガヴーリンを、昨年旅立ったメイビーはラフロイグを、新潟へ転勤になった西やんはアードベックを、沖縄でイタリアンのお店を経営している勉ちゃんはボウモアを愛してたっけ…そんな仲間の笑顔をひとつひとつ思い浮かべながら、遠くアイラ島を想い、こうして穏やかな海を眺めながらの一杯は、暫しの間、時間をゆっくりと巻き戻してくれる。昔の仲間との会話に美味い酒は欠かせない。そして、このアードベックを垂らしていただく松島の牡蠣は絶品!是非ともお試しあれ。