月曜日、神戸在住のあるお客様が仙台で開かれた会合に出席した後、店にいらしてくれた。彼は年に三・四回ほどの来店客ではあるけれど、穏やかなお人柄と、私にとっては懐かしい関西弁で周りのお客様を魅了させる空気を持った方。昨年末にひょんなことからワカメちゃんとある約束を交わす。彼の仕事場の近くにあるケーキ屋さん(兵庫県三田市)の小山ロールを手土産に年明けお会いしましょうとの約束。小山ロールとは…TV東京「TVチャンピオン」グランドチャンピオン大会決勝の中で生まれたという有名なケーキ。全国の強剛パティシエが腕を競うその番組で、小山シェフがめざしたのは「SIMPLE IS BEST」。たっぷりのハチミツと卵黄を泡立てて、丁寧に空気を抱き込ませた生地をじっくり焼き上げ、しっとりときめ細やかなスポンジに、まるでカステラのように懐かしい甘さと、卵の風味、フワフワ、もっちりした口当たり。中には生クリームにカスタードをほんの少し混ぜたコクのあるクリームと、甘さをおさえた栗のコンポートを巻き込みましたと、涎の出るようなコメントが載ってました。そして大会では、この小山ロールが味覚部門の1位を獲得。
シンプルなものほど誤魔化しがきかず難しい…人間も、歳をとって肩書きも美貌も体力もなくなってきた時に、その人の生きてきた姿が浮き彫りになって、どうカッコつけようが誤魔化せないのだと、大先輩に教わったことがあったけ。
そして、そのお客様は約束の小山ロールを前に曰く。「年末にある懇親会に出席したら、なんと小山パティシエと同席させていただいてね。彼のお人柄にすっかり魅せられてしまいましたよ。チャンピョンとかになると天狗になってる方もいらっしゃるけれど、彼は近い将来、子供たちが自分のお小遣いで買えるような、子供達しか買いに来れないような、そんなお店を開くのが夢なのだと語ってくれましてね。おそらく利益なんかあらへんやろ。なんや、感動しました。」私が元気なうちに、「子供のためのケーキ屋さん」を実現して欲しいな。それよりも、偶然にも小山さんと同席されるという彼の正体は?まぁ、私のお店ではどこで何をされているかは深く問わないというか、関心のないことなんだけど、でもやっぱり気になる…スイーツには縁遠い私であったけど、どこの世界にも素敵に生きてらっしゃる方がいるんだなと、年明けから胸が熱くなるお話を伺いながら、小山ロールをみんなで味わったのでした。人は皆、美味しいものを口にするとふっと笑顔になる。これには、カルバドスが合うかな。いや、こう寒けりゃホットワインでしょ。