先週は、多忙を極めた。生まれて三ヶ月にも満たないモンスターが、鼠径ヘルニア、いわゆる脱腸の手術のために入院。付きっきりの娘に付き添う。なぜか今年は、我が家ではヘルニア(春にはチョコの椎間板ヘルニアの手術)にご縁がある(笑)。
大学病院といえば、10年前にここの院内授業を受け持った。懐かしい小児病棟のパソコンルームは未だ変わらず。あの頃の子供達は元気だろうか…いや、待てよ。高学年の子供はもう22才になるんだ。病気を克服し、パソコン好きの社会人一年生にでもなっていたら何とも嬉しい限り。私の方は、視力が衰えて、老眼鏡なしではキーも叩けないというのに…トホホ。
午前8時半、手術室の前には患者の長蛇の列が。恐るべし大学病院。担当する執刀医と麻酔科医、看護師が現れ、本人確認を終えると機械的に次々に中へ入って行く。何も知らないモンスターは、ニコニコ笑って手術室へ入っていった。一時間後、無事に手術を終えて出てきたモンスターは、麻酔で夢の中、ちっちゃな酸素マスクを嵌めて、しかし笑っている。付き添ってくれた看護師が言うには、術後に笑ってる赤ちゃんは初めてだそうな。そんなことより、一番安堵してたのは、娘であろう。子供を産み育てるというのは安易なことではない。その中で次第に母親となっていくのだ。
週末、昔、漢方の勉強に使用した「養生訓」を手に取り、じっくり読んで見た。養生訓とは、江戸時代の儒学者、貝原益軒によって書かれた健康的な生活の暮らし方についての解説書である。中でも、貝原氏はこころの養生、人生の楽しみ方として孟子の三楽を取り上げている点で、哲学書とも言われている。三楽とは、道を行い善を楽しむ、病なく快く楽しむ、長寿を楽しむこと。

今朝は、どこの局も山中教授のノーベル賞を一番に伝えていた。生物のさまざまな組織に成長可能な人工多能性幹細胞「iPS細胞」の発明は、傷んだ臓器や器官を修復する再生医療への期待を大きく膨らませてくれた。同時に、養生訓の冒頭の一節が浮かんだ。

人の身は父母を本とし、天地を初とす。天地父母のめぐみをうけて生まれ、また養はれたるわが身なれば、わが私の物にあらず。

山中教授もおっしゃっていたが、まずは産み育ててくれた親に感謝を。