ボーナスが出ると、決まって娘は私とおばあちゃんにお寿司をご馳走してくれる おばあちゃんが亡くなった父と何十年も前から通う馴染みのお店には、あの頃からの板前さんが健在で・・・まもなく定年になる店長の言葉がふいに涙を誘った 「早いもんだね~ おばあちゃんたちがお孫さんを連れて呑みに来たころからもう二十年以上過ぎたんだね その孫からの恩返しかい そういえば・・・開店間もない店の空いているテーブルで、おじいちゃんが孫たちに文字を訓えてあげていたよ 自分もそうだけど、子供の時分は父親からいろんなことを教わった 辞書を紐解くのも学校で学ぶのも大切だけど、子供は家族との対話を通して大事なことを教えてもらうもんだ おじいちゃんは(おばあちゃんはすぐにベロベロになってたけど)酔ってもしっかりしていて父親の代役を果たしてくれてたと思うよ」 昼夜仕事に追われてた私はその場にはいない 有難うと伝えたい父は、もうお星さまになってしまった・・・ 翌日、娘夫婦と石巻の仮設に移ったモンスターへクリスマスプレゼントを届けに行ったときのこと その帰り道、偶然にもなつかしいカラオケ屋の前で車が渋滞した 娘が、小さいころに家族全員でこのカラオケ屋へ通ったことを思い出して、よく歌わされた「一円玉の旅がらす」を歌いだした 私もつい口ずさむ その昔、翌26日が誕生日の息子のお祝いも兼ねて、我が家のクリスマスはいつも盛大だった そして、酔いも回り調子がついてくると、なぜか?ここのカラオケ屋へいってまた盛り上がる可笑しな家族(笑) そんな家族のお蔭で母子家庭の寂しさを味わうことなく育った子供たちは、いつしか愉快なサンタを演じる大人に成長した 私がまだ将来を見通せてないとき、損得で仕事や友人を選んだら寂しい人生になるぞと父から言われたことがあった 受け売りだけど、その言葉をモンスターへ残したい なぜなら今、贅沢はできないけれど、好きな仕事に就いて、旨い酒が飲めて一緒に泣いて笑ってくれる仲間がいることは、幸せもんだなぁとつくづく思うからである 其々に様々な思いを抱きながら、この私は旨いせり鍋と熱燗でホワイトクリスマスをほっこり終えた 伊集院氏は哀しみにも終わりがあると言ったけど、愉しみにも終わりがやってくる 生も死も、哀しみも愉しみも常に隣り合わせで、生きている人間にとって避けられないこと・・・ そして、ひとは得たものより失ったものを動機に何かを始動するという 来年はいいことがある、きっと |
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