いつだったか、深夜の分町を闊歩していたら、二郎先生がすれ違った車椅子の男性二人を指して「あの方々、いい顔していたね~」 なんと、よく見れば講習仲間のちばっちだった 月に一度は行きつけのスナックでカラオケを死ぬほど歌うことが何よりの愉しみと豪語していたけれど、今夜がその夜であったか・・・ 美しいお姉さんに車椅子を押してもらい、あまりにうれしそうなちばっちに声をかけずに見送った 彼は、自分の力で大崎市にバリアフリーの家を建て住んでいる 震災後は石巻に暮らしてた(津波で家は流された)お母様と妹さんをそこへ避難させただけじゃなく、中古の家を探して購入してあげたというから、頭が下がる 今朝の新聞に、全国で生活保護を受給している人が7月時点で205万495人となり、戦後の混乱の余波で過去最多だった1951年度の204万6646人を超えた記事が載っていたが、彼は昨年「社会福祉法人はらから」の店長を辞め、約17万の失業保険が1年間支給されるというのに、体も心も腐るといってすぐに職を見つけて働きだした そんな彼の口癖は「百不知、百不会」 同じ障害を持つ受講生に対しての励ましの言葉である 何も知らない、何もわかっていない、それでいいんだよ、という禅語である 少しくらい何かを知っていたとしても、その知恵の生かし方を知らなければ知らないのと同じ 知らないことには素直に学び、わからないことは経験を積めばよい、ただそれだけのことと、彼はエールを送り続ける 彼の言葉には説得力がある 翌日、ちばっちに電話を入れたら芋煮会に行きたかった~と言われた 広瀬川湖畔の河原は足元がキツイから・・・と言おうとしてその言葉を呑みこんだ 今の彼にはキツいことなんてなにひとつない キツい人生をしっかり生き抜いてきた彼になんとも失礼な言葉だった ごめんね、来年は必ずお誘いします、必ず・・・
生き方がその顔に現れるという 彼のような、何事にも動じることなく、そして今ここを愉しめる生き方をせねば