土曜日の昼下がり 台原のサイゼリアに高校時代の仲間が集合 S子は昔から沈思黙考なお姉さまタイプ、そしていまだにバリバリのキャリアレディ、モバイル片手に楚々とやってきた T子は大学教授の旦那様と医者となった息子たちに命を賭け、東奔西走しつづける有閑マダム、案の定一番遅れて慌てて入ってきた「遅刻!高校時代と変わんないね」とバッサリ斬るわたしに相棒M子が「貴女も相変わらず辛口だね~ 規律委員健在だね~」と一言 なんと、この私が前期規律委員だったことはすっかり忘れてた 校則とは破るためのものなり、などと豪語していたというからそれは実に私らしい 記憶力抜群のそんなM子は独立不羈タイプ 父親のような男と結婚して離婚して、今度は息子のような男と再婚してみなを驚かせた 自分の人生、誰に迷惑かけたわけじゃなし・・・と苦笑 遙々東京から駆けつけた 二年ぶりの再会である 哀しいかな、我々の年齢になると号令がかかるのはあまりいい報せではないことが多い 今回は入院している仲間のひとりへのお見舞いである 「肺がんが見つかってね、腎臓にも転移しててよろしくないの・・・」そう電話が入ったのは先月末 身体の変調は全くなく、津波で流されて亡くなった親戚のお葬式に参列したときのこと 急に咳が止まらなくなり、たまたま居合わせた友人の医師から肺の検査を強要され発見できたのだという これは神の思し召しね、いつも前向きな彼女らしい言葉 どの病室もそうだが無機質な空間が広がる、そこに贈った花束を飾ったら一瞬に華やいだ 昔、彼女と初めて会った時のあの才気煥発な印象と重なった 想定外の津波や原発・・・いや、世の中は想定外なことばかり 大切なのはなにがあっても動じない強いこころなのだろうが わかっていても強がることもできないときもある 彼女の再起を祈りつつ、その夜は相方と呑んだ
翌日は朝からのんびりと過ごす 待ちに待った赤毛のアンの原書が届き、いよいよ読み始めることに おしゃべりで夢見がちな、そばかすで赤毛の孤児アンが、マシューとマリラの兄妹に引き取られてグリーン・ゲイブルズへやってくる場面から物語は始まる・・・その時、私のこころは、学生時代に翻訳本を初めて手にしたあの頃へ戻っていた 昨日の仲間達の笑い声も遠く木霊する どの時代も一冊の良書と悩みを打ち明けられるひとりの友がいればそれでいい 学生時代から、わたしはそう思っていた その想いを裏付ける如く、昨夜の情熱大陸は伊集院静 小説で人生を変えることはできないが、小説はひとの哀しみに寄りそうことはできると、彼は語っていた