それは私の愛するモンスターのことである 昼下がり、桜の舞い散る長閑な公園で遊んであげていると、野外活動の時間なんだろう、近くの保育園の園児たちが数十人やってきた ブルーの園児服に交わって追いかけっこするモンスターが、どこかみにくいあひるの子のように見えた 震災がなければモンスターもこの春から保育園に通っているはずだった その保育園も、大好きな仮面ライダーの水筒も、ママのお手製のお弁当バックも何もかもが津波で流された 先週末、少し大きめの支援物資の服を着て賞味期限の切れたお菓子を持って仙台へ一時避難してきたモンスター 震災前と変わらぬやんちゃぶりだが余震が来ると「つなみがくるからにげないとだめだよ」と呟く 大丈夫、ここまで津波は来ないから・・・ たった一杯の卵かけご飯で大満足のモンスター パパとママが傍にいればしあわせなんだよね 避難所では想像通りプライバシーなどない 4月から、難を逃れた旦那の実家にお世話になるが一日も早く住居を探したいと気だけが焦る 限られた仮設住宅は申込みだけ、支援金も義捐金も未だに支給がない中で身の回りのものを揃えるにも、今後の子育ての不安も募る(今回はみっちゃんはじめ沢山の方々から家庭用品を提供いただきました 有難うございました)「わたしたちは命だけは助かったことに感謝しなきゃなんないね」地元の被災者の方々は、この言葉で互いの苛立ちを鎮め、そんなことの繰り返しで時は止まったままだという でも、いつしかこの経験が生きる力となり自分を導くときがくるはず 必ずや白鳥となれモンスター 貴方が大人になったとき、目の前に広がるあの美しい万石浦は彼の眼にどう映るのだろう 漸くゆっくりと時が動き出した私だが、元気のないときに数年前のスタンフォード大学卒業式で語った、アップルコンピュータ社の創立者 スティーブ・ジョブス氏のスピーチを聴く 彼は人生の贐にこう語る 未来に先回りして点と点をつなげることはできない できることは過去を振り返ってつなげることだけ 時に目の前が真っ暗になるようなことがあっても、自分にとって一番大切なこと一番愛することを探し続けていくこと、自分の力を信じていくこと そして・・・毎日が人生最後の日だと思っていきてみなさい 誰もが生きる時間というのは限られている 「ハングリーであれ、愚かであれ(Stay Hungry. Stay Foolish.)」