まったくもって、あなどれない――。映画『101回目のプロポーズ SAY YES』(東京・お台場シネマメディアージュなどで上映中)を見て、そう思った。(写真はサーチナ編集部が2013年10月9日に行われた記者会見で撮影)
まったくもって、あなどれない――。映画『101回目のプロポーズ SAY YES』(東京・お台場シネマメディアージュなどで上映中)を見て、そう思った。(写真はサーチナ編集部が2013年10月9日に行われた記者会見で撮影)
1991年に放送され、大人気を博したテレビドラマのリメイク版。いや、リメイク版と言ってよいのか。まったく新たな命を吹き込まれた作品だ。「中華圏におけるリメイクか」などとは、まったくもってあなどれない作品だ。
ヒロインは美しきチェリスト。映画版では「もうひとひねり」があるのだが、結婚式の直前に、交通事故で恋人を失ったことで、深い心の傷を負う。そして「さえない男」がヒロインを愛するようになる――。このあたりはテレビ版と同じ。では、どこが違うのか。
映画版は20年後の上海に舞台を移した。しかも、武田鉄矢が「20年後の星野達郎」として登場。1シーンではあるが、物語を大きく動かす伏線になる。もうひとつの『101回目のプロポーズ』の世界が、動きだす。
リメイク版ではないリメイク版。しかも完成度が高い。その秘密のひとつは、中華圏におけるテレビドラマ『101回目のプロポーズ』の人気と知名度の高さにあったようだ。ヒロインのイエ・シュン(葉薫)を演じるリン・チーリン(林志玲)だけでなく、製作スタッフの多くが若いころ、『101回目のプロポーズ』を夢中になって見た。そのことが、この“業界”で働くことを目指す、大きな動機になったという。
だから、単純なリメイクではなく、テレビ版を完全に消化して「自分のもの」にした上で、それを下敷きに新たな映画版の世界を築いた。ひとつ、例を挙げよう。武田鉄矢、すなわち「20年後の星野達郎」とイエ・シュンを愛するホアン・ダー(黄達)が酒を酌み交わすシーンだ。
星野の中国語は「ニイハオ」、「シエシエ」のレベル。ホアン・ダーはメモを見ながらの日本語。やはり「アリガトウゴザイマス」レベル。イエ・シュンは日本に留学して、矢吹薫(星野薫と言うべきか?)にチェロを学んだ経験があるから、日本語はできる。しかし用事で遅れてしまう。星野とホアン・ダーは、言葉が通じないながら意気投合。
武田鉄矢は日本公開に先立つ記者会見で、ホアン・ダーを演じるホアン・ボー(黄渤)のことを、「いやあ、言葉は通じないけど、本当にいいヤツでね」と語ったが、演技抜きで2人は意気投合したのだろう。そんなほのぼのとした雰囲気がスクリーンから伝わって来る。
イエ・シュンが到着した。会話がやっと成立する。ところが、星野は「このふたり、最後には結ばれるのでは」と思っている。イエ・シュンもホアン・ダーに好意を持っているが、婚約者を失った心の傷があり、ホアンの気持ちを受け入れられないでいる。だから、星野の率直な言葉をホアンに伝えられなくなり、ごまかしたりする。洒脱に描いてはいるが、イエ・シュンの心の葛藤を改めて絶妙に描写するシーンだ。
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リメイク版ということで、ハッピー・エンドになるだろうとは予想できる。しかし、それでもはらはら、どきどき。「果たして、このままで大丈夫?」とも思いながら、スクリーンを見つめることになる。テレビ版とはひと味もふた味も違う、ラストまでの持っていき方。
テレビ版の「101回目のプロポーズ」に夢中になった人が見れば、25年前の感動と、この映画の感動を重ね合わせることができるだろう。しかし、「テレビ版」の経験の有無には関係なく、十二分に楽しめる作品だ。
「101回目のプロポーズ」は多くの場合、「さえない男でも全身全霊の愛で、すばらしい女性と一緒になることができた物語」と受け止められている。もちろん、その通りだ。ただ、『101回目のプロポーズ SAY YES』を見て、この作品が改めて訴えていることはなにかと、もう一度考えてしまった。
ホアン・ダーは初めてイエ・シュンに知り合った時から、彼女に自分の欠点を指摘された。そして、そのことを感謝している。逆にイエ・シュンは初対面の折、ホアン・ダーにちょっとした“窮地”から救ってもらった。さらに、ホアン・ダーは彼女に心の傷から立ち直ってほしいと願い、彼女を見つめ、自分は彼女のために、なにができるかと考えていた。
男女の愛であるからには、相手を求めることになる。しかし2人はそれ以前に、相手に与えることを考え、そして互いにそのことを感謝していた。『101回目のプロポーズ SAY YES』は相手に与える愛、感謝する愛の貴さを見る者に訴える作品だ。(編集担当:如月隼人)
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