ウォール・ストリート・ジャーナルのススメ | ビジネス人間学




ビジネス英語の歩き方:

 ビジネスで使う英語に強くなるためには、何といっても英語のメディアに直接触れることが一番です。いまではオンラインに、しっかりしたビジネス英語の情報があふれています。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、その代表格といえるでしょう。活用しない手はありません。

【画像:ウォール街のチャージング・ブル、ほか】

 いうまでもなくWSJは米国を代表する経済紙で、発行部数もニューヨーク・タイムズなど、他の主要紙の倍くらい(約250万部)あります。日本と違って、米国には全国紙と呼ばれる新聞がほとんどなく、唯一といっていい一般紙「USA Today」と並んで、このWSJは貴重な存在です。



 世界的には、英国のフィナンシャル・タイムズも多くの読者を抱え、グローバルメディア的存在になっていますが、米国を代表する経済紙としては何といってもWSJ。Webサイトに行けば主な経済関連ニュースがすぐに読めるのはありがたい限りです。



●米国視点から日米関係を冷静に見られる



 WSJを読むことをお勧めする理由はいろいろありますが、日本語でも読める唯一のメジャーなメディアという点は無視できません。米国、欧州、アジアのビジネス、経済に関するニュースをチェックするのには非常に便利ですし、日本のビジネス、経済を米国の視点から見るとどうなるかを知るためには、実にありがたい存在です。



 例えば、最近の日米間の大きな話題に、次期駐日大使にキャロライン・ケネディ氏が決まったというものがありました。これが米国ではどう報じられているでしょうか。まずは日本語でさっと目を通しておけば、あとから英語の原文を読むことが簡単になります。



 ケネディ家というのは、米国における皇室のようなもので、その主要な一員が外国の大使として出るというのは、米国にとっても大きなニュースなのです。一部の日本メディアがしたり顔で、再選協力へのオバマ大統領の論功行賞人事だというような表層批判をしていますが、これは米国では当たり前のこと。批判の対象になるようなものではありません。日本の外務省では、職業外交官が先輩、後輩意識でさまざまな隠し事を抱えて存続していますが、そういう閉鎖社会の弊害をまったく別分野の人の起用で防ぐという意味もあります。



 今回の人事も、いままでの駐日大使の多くが、米国内の超大物だった系列に連なるもので、米国にとって日本という国がいかに重要かをあらためて示しただけのことなのです。先に参照した記事では、モンデール副大統領などのケースを挙げていますが、他にこれだけの大物大使を米国から迎えている国はありません。最近は、日米同盟重視の現れなどと日本のメディアはコメントし、対中国政策などと見当違いの見方もありますが、日本という国に対する米国の、民主党、共和党を問わない、リスペクトの現れといえるでしょう。



●日本企業のトップインタビューも掲載されている



 WSJには、日本の個別企業に関する情報もよく載っています。例えば7月28日には、サントリーグループが子会社のサントリー食品上場を無事果たしたという記事を載せています。非上場の代表的大企業としてサントリーが、筆頭子会社を上場させることにはどういう意味があるのか? 同社CEOの鳥井信宏氏のインタビューで詳しく報じています。



 この記事は、2日後の7月30日に日本語版にも掲載されていますので、日本語と英語の両方を読み比べることができます。少し残念なのは、ビデオにもなって掲載されている鳥井氏(創業者のひ孫)の英語のインタビューが、いまひとつインパクトに欠ける点でしょうか。どうも国際戦略を、大変な馬力で推し進めている佐治信忠氏(サントリーホールディングスCEO)の方が、押し出しが強そうですね。



●「WSJで学ぶ経済英語」も役に立つ



 WSJ日本版のいいところは他にもあります。例えば日本人ビジネスパーソンのために、カギになるビジネス英語の解説も載せています。最近のものではグローバル預託証券などという専門用語も取り上げています。



 この解説は通りいっぺんのものではなく、かなり詳しい用語解説が、すでに90回以上掲載されています。これを読んでいるだけで、最新のビジネス英語に相当詳しくなることができます。



 ところで、ウォールストリートといえば、巨大な牛の置き物で有名です。置き物というよりは巨大な物体という感じですが、これはある種のおまじないです。何のおまじないかというと、株価が上がるようにというウォール街の願いが込められているのです。



 名前もCharging Bull(チャージング・ブル)といい、いわば「攻める牡牛」「攻める猛牛」といったところです。その由来は、牛は戦うときにツノを激しく上に動かすところから来ています。下から上に、という猛牛の戦闘動作から、株価上昇のシンボルとなっているわけです。したがって、上昇基調の株式市場のことを、ブル・マーケットといいます。



 これに対して下げ基調のときはベア・マーケット。ベアとはBear(熊)のこと。牛より熊のほうが強そうで相場上昇にふさわしい感じがしなくもないのですが、戦うときに上腕(前足?)を下げて敵に向かうことから、下げ相場のことをベア・マーケットというようになったわけです。



 WSJを詳しく読み込むには、有料会員登録が必要ですが、とりあえずどんな感じかトライするには無料で読める部分だけでも十分です。ぜひお試しください。







[河口鴻三,Business Media 誠]