◇安定のみかじめ料/不況で失業者流入

 福岡県内の暴力団組員が昨年までの10年間で、2690人から3720人へと1000人以上増えたことが、県警への取材で分かった。全国ではほぼ横ばいで推移しており、福岡は突出しているとみられる。県内には一つの都道府県では最多の五つの指定暴力団があり、捜査関係者は組織の収益が安定し、運営がしやすい土壌が勢力拡大につながっているとみている。県警は「暴力団犯罪の撲滅」を今年の最重点目標に挙げているが、組員をいかに減らすかも課題の一つとなりそうだ。

 県警によると、県内の組員は98年は2690人(構成員1980人、準構成員710人)だったが、増加傾向が続き08年は3720人(同2450人、同1270人)となった。一方、警察白書によると全国の組員は、98年の8万1300人(同4万3500人、同3万7800人)が、07年は8万4200人(同4万900人、同4万3300人)と3%の微増。

 県警幹部によると、全国的に暴力団が潜在化する中、福岡では活動状況の把握に努めており、組員数が多めになっている事情もある。しかし「体感的にも組員は増えており憂慮すべき状態」という。

 福岡県内には道仁会(久留米市)、九州誠道会(大牟田市)、工藤会(北九州市)、太州会(田川市)、福博会(福岡市)の五つの指定暴力団のほか山口組傘下の暴力団が、県内全域で活動している。道仁会と、九州誠道会は抗争中だが、道仁会と工藤会、太州会は友好関係を築いている。

 県内の暴力団幹部によると、それぞれの勢力が公共工事の受注業者や風俗店などから安定してみかじめ料などを得ているという。捜査関係者は「最近の不況で働き口がない人が暴力団に流れている面もあるようだ」と話す。

 県警は今秋の制定を目指す暴力団追放条例で、暴力団に利益供与する企業などに罰則を科すことなどを検討している。ただ、ある幹部は「市民の間で本当に暴力団を嫌う感情が育たない限り、条例を制定しても効力は薄い。暴力団員は今後も増加する可能性がある」と話している。