暴力団組員の生活保護不正受給94件…判明分だけで4億円
 暴力団組員が生活保護を不正に受給したケースについて、読売新聞が全国98の自治体に調査したところ、厚生労働省が組員への生活保護の支給を原則禁じた2006年3月から昨年9月までに、40自治体で94件の不正受給が発覚していたことがわかった。

 総受給額は判明分だけでも4億円に上る一方、返還請求で取り戻したのは10自治体の約1500万円にとどまっている。組員が受給した保護費の返還請求に関し、厚労省が明確な規定を設けていないのが主な理由で、生活保護が急増する中、厚労省は早急な対策が求められている。

 読売新聞では、全国17の政令市と東京23区、中核市、県庁所在市の計93自治体に加え、不正受給を巡る刑事事件が問題化した北海道滝川市や埼玉県深谷市など7自治体を加えた100自治体にアンケートを実施。高松、松山両市を除く98自治体から回答が寄せられた。

 このうち、06年3月以降、暴力団組員への生活保護が発覚し保護を取りやめたと回答したのは、40自治体の94件。不正受給額は、明確な回答を寄せた33自治体の57件だけで計4億円。これに加え、大阪市や京都市など7自治体の37件分は、記録がないと答えたり、回答を控えたりしたため正確な金額は不明だが、少なくとも1億円に上るとみられる。

 一方、組員に保護費の返還を請求したと回答したのは、東京・杉並区、名古屋市、徳島市など16自治体(計8100万円)で、残る24自治体は「いつから組員だったか分からない」などとして返還を求めていないとした。返還請求した16自治体の中でも、保護費を取り戻せたのは、10自治体の1500万円だった。

 また、半数を超える51自治体が、景気の後退や雇用情勢の悪化で「生活保護の申請が増えている」と回答。東京・新宿区や浜松市など18自治体は「申請急増による窓口の混乱に乗じて、不正受給が増えないか懸念している」と答えた。

 組員の生活保護受給については暴力団の資金源になる恐れがあるとして、厚労省が原則支給しないよう通知しているが、この通知には保護費の返還に関する規定がない。このため各自治体に必ず返還請求するかどうか尋ねた質問では、「する」としたのが56自治体で、30自治体が「場合による」と答え、「しない」とした自治体も12あった。
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