ヤミ金融に関する法改正で高金利契約などへの罰則が強化された平成15年以降、減少していた被害者支援団体への相談が、再び増加傾向に転じている。昨年、「大阪クレジット・サラ金被害者の会」(大阪いちょうの会)に訪れた相談者は17年の約1・6倍。出稼ぎ外国人や路上生活者を対象にした悪質業者による被害相談も寄せられるようになり、同会は「景気の悪化で増加している貧困者が狙われている」と警戒を強めている。

 昨年9月2日、大阪市天王寺区の飲食店で働く韓国籍の40代女性が同会に相談に訪れた。同じ韓国籍の業者に10万円を借り、数週間にわたり週4万円の利息を取り立てられたという。女性は、50万円の借り入れで、1カ月に9万5000円もの利息を取られたこともあった。

 同会が調べたところ、業者は韓国から出稼ぎにきた女性ばかりを狙って現金を貸し付けていた。「韓国語が通じるから借りやすかった」と話す女性もいたといい、異国で働く女性の弱みにつけ込む手口だった。

 また、大阪市西成区の路上生活者や日雇い労働者からの相談も増えている。

 同区の60代男性は19年10月に40万円を借り入れた際、年金手帳と通帳、印鑑を業者に担保として渡したため、支給された年金をそのまま利息として回収され続けた。2カ月に1回振り込まれる約8万円の年金は、借入金に対して明らかに違法な高金利だった。

 ヤミ金融への規制をめぐっては、15年の出資法と貸金業規制法の改正で、無登録営業や法定利息(年29・2%)超えの貸し付けに対する罰則を「懲役3年以下、罰金300万円以下」から「懲役5年以下、罰金1000万円以下」に強化。取り立て行為に対する規制も厳しくなった。

 さらに、18年の法改正では無登録営業への罰則が「懲役10年以下、罰金3000万円以下」に引き上げられた。

 しかし、同会への入会者(継続的な相談者)は17年には年間124人にまで減っていたが、その後は徐々に増加。18年は135人、19年は198人にのぼり、昨年は5年ぶりに200人を超えたという。

 同会の川内泰雄事務局次長は近年の傾向について「全国での組織的なヤミ金の被害よりも、身近な貧困者を狙った小口の業者による被害が増えている」と指摘。「表面的には目立ちにくくなっているが、大きな被害にならないうちに相談してほしい」と話している。

 ヤミ金融の被害対策に詳しい鈴木嘉夫弁護士の話 「近年、ヤミ金の被害が大幅に増えたという印象はないが、昨年から広がっている派遣労働者の解雇で、ヤミ金に手を出さざるを得ない状況が生まれることも懸念される。国や自治体による融資や給付金制度の拡充をはじめ、貧困やワーキングプアへの根本的な対策など、セーフティーネットの整備が求められる」

国家権力の反乱―新貸金業法は闇金を利するだけではないか/小林 節
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