「その世界では五指に入ると言われる麻薬ブローカー」。覚せい剤約332キロ密輸にかかわったとして覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された嶋田徳龍容疑者(40)を、福岡県警幹部はそう評する。福岡県警などの合同捜査本部は、同容疑者が関東地区を中心とした複数の暴力団組織の卸元だったとの情報もつかんでおり、捜査は今後、同容疑者の取引関係を軸にした国内での流通ルート解明に移る。

 嶋田容疑者は中国マフィア組織の関係者とされ、合同捜査本部は同容疑者が日本国籍取得後も頻繁に中国に渡航していたことを把握している。昨年ごろから中国に移り住み、本格的に密輸にかかわるようになったという。別の捜査幹部は「中国マフィアにかなりのネットワークを持っているはずだ」と話す。

 日本では「暴力団組織内の薬物を取り扱う部門に直接卸している」とも言われ、合同捜査本部は国内にも広い密売ネットワークがあったとみている。

 覚せい剤の生産地は今のところ判明していないが、別の捜査幹部は「北朝鮮の可能性がある」と指摘する。捜査当局などの監視・摘発で北朝鮮から直接日本に送るルートが使いにくくなり、中国経由のルートに切り替えた可能性があるという。

 最近は国際郵便を使った小口密輸が主流になっていたが、品薄による価格高騰が巨額の利益をねらった大量密輸を招く恐れもあるとして、関係機関が警戒していた。今回の押収量は昨年の年間押収量339キロに匹敵し、一度の押収量としては今年最多。過去にさかのぼっても99年の鹿児島での564キロ、96年の神奈川の528キロに次いで3番目に多い。福岡県警幹部は「一つの大口ルートを断っても終わりではない。必ず新しい手法を考えてくるはず」と警戒している。


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