最近の暴力団は、景気回復基調に乗じて、いわゆるバブル経済期によくみられたような不動産取引、証券取引の利用による犯罪を敢行している状況がみられる一方、バブル経済崩壊後に目立っていた金融・不良債権関連事犯の検挙件数は平成12年以降は減少傾向にあり、暴力団が、その時々の社会経済情勢の変化に対応して、多額の資金を獲得できるポイントを巧みに探り当てながら資金獲得活動を行っている状況がうかがわれる。


いわゆるバブル経済期にみられたような不動産取引、証券取引の利用による犯罪の事例としては、


○ パチンコ関連情報提供会社役員(57)らが、自らが実質支配するA社をB社の子会社とするに当たり、架空売上げや利益をA社に計上させ、また債務超過にあったA社に増資を装わせるなどして、A社の企業価値を過大に評価し、それにより算定した比率でA社をB社の完全子会社とする株式交換契約を締結し、これを正当なものとする虚偽の内容を含む公表を行うなどし、有価証券の取引のため偽計を用いたことから、証券取引法違反(偽計)で検挙した事例(大阪、2月検挙)


○ 会社役員(59)らが、弁護士でないのに、不動産会社からの委託を受けて、同社の所有するビルの賃借人に対し、部屋を明け渡す義務を負うことなどを内容とする契約の締結に応じるよう交渉して賃貸借合意解除契約を締結するなどしたことから、弁護士法違反(非弁行為)で検挙した事例(警視庁、3月検挙)

○ 山口組傘下組織組長(63)が、建物の登記済権利証を入手したことを利用して、無断でその物件の所有権を移転登記するために、土地建物売買契約書を偽造して、虚偽の所有権移転登記を地方法務局支局に申請した事例(埼玉、5月検挙)などがある。


その他の特徴としては、


○ 山口組傘下組織幹部(47)が、元理事であったNPO法人の理事長らと共謀して、金融機関から金員等を騙し取るため、虚偽の養子縁組をすることを企て、虚偽の養子縁組届等を区役所に提出して不実の戸籍を編成させ、さらに、運転免許試験場において、虚偽の養子縁組に基づき住所等が記載された運転免許証の交付を受けた事例(大阪、5月検挙)

○ 山口組傘下組織幹部(49)らが、偽造クレジットカード用のプラスチック板を隠匿した郵便物を中国から日本に発送し、輸入してはならない貨物を輸入しようとしたとして、関税法違反で検挙した事例(愛知、6月検挙)などのように、虚偽の戸籍届や偽造クレジットカード作成に係る、いわゆる犯罪インフラを構築する犯罪を引き続き敢行していることが挙げられる。

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