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「ダンダリン 労働基準監督官」の1シーン。サプライズ・ヒロインの今後の活躍に期待!(日本テレビ提供)(写真:産経新聞)
TBS系ドラマ「半沢直樹」の大ヒットで活気づくドラマ制作現場。過去のドラマをみると、主人公の職業は刑事、医者、パイロット、教師などが“定番”で今もなお根強いが、「お堅い」「地味」のイメージが強い銀行員が主役の「半沢-」や、一昨年に大ヒットした、家政婦がヒロインの「家政婦のミタ」(日本テレビ系)がその構図を変えそうな気配だ。さっそく“労基署の女”をヒロインとした「ダンダリン 労働基準監督官」(日本テレビ系)などの話題作も。変わり種職業の主人公が今後、どんどん取り上げられていくことが予想される。
■ダンダリン
「ダンダリン-」は週刊「モーニング」連載の人気漫画が原作。いわゆる“ブラック企業”の横暴から労働者を守ることを職務とする女性労働Gメン・段田凛(だんだ・りん)の奮闘を描いたドラマだ。
裏番組が「半沢直樹」を演じた堺雅人主演の「リーガルハイ」(フジテレビ系)という不運もあって、視聴率こそ低迷しているが、「『半沢-』に続き、これまでのドラマになかった主役設定。労働基準監督官という職業がイマイチ世間に認知されていないビハインドはあるが、視聴者の心を揺さぶる人間ドラマを描き込むことができれば大化けする可能性もある」(在阪テレビ局関係者)と注目されている。
■“定番”職業
これまでのドラマ(ホームドラマや時代劇などを除く)の主人公の職業をたどってみると、大半が刑事、医者、パイロットなど意外と限定されている。
定番中の定番は刑事。昭和36年~52年放送の「特別機動捜査隊」(NET系=現テレビ朝日)をはじめ、「太陽にほえろ!」(日本テレビ系、47~61年)、「大都会」シリーズ(日本テレビ系、51~54年)、「特捜最前線」(テレビ朝日系、52~62年)、「西部警察」(同、54~57年)…と枚挙にいとまがなく、現在も「相棒」シリーズ(テレビ朝日系)などに受け継がれている。
同じ事件もので刑事以外の事件関係者にスポットを当てた作品も。「傷だらけの天使」(日本テレビ系、49~50年)などは探偵を、「鉄道公安官」(テレビ朝日系、54~55年)はタイトル通り鉄道公安官という特殊な捜査関係者を主人公とし、さらに弁護士、検事、裁判官…と派生している。
■派生の歴史
在京の民放プロデューサーは「ドラマの成否は、『正義』を具現化し、いかに視聴者に爽快感、カタルシスを与えられるか、がカギ。その視点からすると主人公の職業は限られてくる。刑事ものが人間ドラマを描きやすいのは昔も今も変わらない」と指摘した上で、こう話す。
「ただ、ドラマ制作者はマネをしたくないという意識が強く、常に新しいキャラクターを求める。同じ事件ものでみると、鑑識官、探偵、弁護士、検事…と開拓し、それに飽きられると、今度は『悪徳』『ニセ』などの設定で裏返す。こうした手法は、事件もの以外でも同じことがいえる」
医学関係のドラマをみると、「白い巨塔」(NET系、フジテレビ系ほか)のように医学界の腐敗を描いた社会派ドラマもあれば、離島に赴任した医師の奮闘を描いた「Dr.コトー診療所」(フジテレビ系)あり、腕は神業だが医師免許を持たない「ブラック・ジャック」(テレビ朝日系)あり。女性の社会進出が進むと、「外科医有森冴子」(日本テレビ系)など女医を主人公にしたドラマも。医者ではなく看護師や救急救命士を主人公にしたドラマも生まれている。
航空関係はパイロットが主人公の「白い滑走路」(TBS系)→客室乗務員が主人公の「スチュワーデス物語」(TBS)→パイロットを目指す女性候補生が主人公の「ミス・パイロット」(フジテレビ系)…といった具合。
一見、動かしがたいと思われる教師ものや学園ものでも、熱血教師、生徒側に焦点を当てた青春ドラマ、社会派と、さまざまなバリエーションを見せている。
■「家政婦」が変えた?
主人公の職業に「変化」が見え始めたのが、昭和の終わりから平成のはじめごろにかけてのバブル期。各局とも若者をターゲットにした、いわゆる「トレンディードラマ」をこぞって制作。CMプランナー、ニュースキャスター、デザイナーといった“カタカナ職業”が幅をきかせるようになった。
ただし、その職業ゆえの深い話やドロドロとした人間模様をえぐるというよりは、恋愛が主体で、物語はあくまでも「軽く、おしゃれ」。職業はアクセサリー的存在にすぎない、というようなドラマが主流だった。
バブル崩壊後は、IT関係や投資ファンド関係がもてはやされ、IT貴族が主人公の「恋におちたら~僕の成功の秘密~」(フジテレビ系)などが作られた。
前出の民放プロデューサーは「ドラマはその時代を反映するものだから当然の現象だが、この時期には、注目すべき変化がもう一つあった。それまで見向きもされなかった職業に焦点を当てたドラマが出てきた」と指摘する。
その代表格が「家政婦は見た!」(テレビ朝日系、昭和58年~平成20年)。上流家庭に派遣された家政婦がその家の人間たち暗部をのぞき見し、その欺瞞(ぎまん)ぶりを家政婦仲間にぶちまける、という内容で、家政婦を主人公に据えるというのが斬新なアイデアだった。
これが、平成23年に大ヒットした「家政婦のミタ」につながる。タイトルはパロディーだが、中身は「-見た!」とは全然違う。心に傷を負った家政婦が崩壊寸前の家庭に派遣され、その家族の絆を修復するとともに自らの人生も修復し、いつの間にか家族に同化していく、という内容で、「家族とは何か、という重要テーマを世に問いかけ、大きな感動を与えた」というのだ。
■見向きもされなかった職業に鉱脈あり
「いい“鉱脈”を探り当てたと言っていいだろう。家政婦が成功したことで、レンタル家族やエスコートクラブといった風俗産業をイメージするような職業にも可能性が出てきた」と民放プロデューサー。
これまで見向きもされなかった職業ということでは、「半沢直樹」の銀行員や、「ダンダリン-」の労働基準監督官、ドラマではないが、映画「おくりびと」の納棺師なども、その延長線上にあるという。
「どんな職業の主人公を設定しても、人情の機微を描き、感動を与えるというドラマの基本的部分は変わらない。今後も、アッと驚くような職業の主人公が登場するだろう」
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