ながいこと更新してませんでしたが…これを書いてました!
はじめて本格的に書きました….hackのオリジナル小説です。
実はまだ最後までできてないのですが…(汗)
自分をたきつけるためにもアップしちゃいます!
ちゃんと書くぞ自分!!(>o<)

※ネタバレはありません。
 また、かんたんな世界観の説明を入れました。
 「.hackって、なに?」という方にも
 読めるものになるよう対処したつもりです。
 では、どうぞお楽しみください…


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.hack//verse seeker
《夢追いびとのストラッグル》


01.

最初にするべきことは深呼吸だ。
それから、汗ですべりそうなコントローラをいったん手離し、気持ちをおちつけること。
目を閉じて息をととのえる。
ここから先はパニックにならないことが何より肝心。
さっきから、やたらばくばくと心臓が踊り狂ってるけど、気にしないことにする。
…てのひらに力が戻って来た。だいじょうぶだ。行ける。
目を開ける。鼻先すぐにあざやかな緑の草むらが見えている。視点が近いのは、しゃがんでいるから。
ずしん、ずしんとヘビーな足音が近づくたびに、細くしなやかな草たちはびりびりと振動する。
とてもFMD---フェイスマウントディスプレイ---ごしの、ゲームの画面とは思えない。
(…リアルだなあ)
のんきな感想。だめだ、現実逃避してる場合じゃないって。
…ふいに、足音が耳を覆いたくなるくらいにでかくなった。
もう、“ずしん”じゃない。“どかん”だ。ほとんど爆発音。
(…あとちょっと。ぎりぎりまで引き付けないと…)
耳に意識を集中する。自分の鼓動の音がうるさい。
…足音がとぎれた。
今だ!!

「それっ!」
思いきって隠れていた岩場から飛び出した。そのままフルダッシュ。距離を取る。
目の前に広がっているのは、いくつもの風車がまわるのどかな草原の景色。
でも、それをのんびり眺めているひまはない。
一瞬でも気をぬいたらやられる、私にとってここはそんなフィールドだ。

**********Ω(オメガ)サーバー 『病める 囚われの 堕天使』

コントローラをあやつり、くるりと方向転換。視界のはしを、かるくウェーブした青緑の髪と涙滴型(ティアドロップ)のアクセサリーがかすめる。
近くにだれか他のPC(プレイヤー・キャラクター)がいれば、あるいは三人称視点に画面を切り替えれば、赤とむらさきのしましま帽子をかぶった小柄な女の子が見えるだろう。
これが私。
PC名は『ジャニ』。この“世界”--『The World』--での、私の名前。

敵は思ったより近くにいた。
魔方陣から登場させられてから、ちょこまかと逃げ隠れするターゲットを、
どかんどかんと歩き回り根気良く探し続けていたのは、巨人の骸骨だ。
…ほんとにでっかい。風車とおなじくらいの背の高さから見下ろされると、かなり迫力がある。
奴はとがった牙のならぶ口をかっと開き、ようやく出て来たひよわそうな獲物に威嚇の咆哮をあげた。
「く、来るならきてみなさいよっ!」
思わずすくんでしまい、ひっくりかえる声をどうにかひねり出し、身構えた。
巨大な骨の兵士は、長い腕をぶうん、ぶうんとふりまわしながらこちらに掴み掛かってくる!
…と、その動きががくん、とつんのめった。
さっきまで私が隠れていた、岩場に足元がひっかかっているのだ。
(よっし、狙い通り…!)
このために、こいつが接近するまで岩陰で待っていたのだ。
出て行くのが早すぎれば巨人のばかでかいストライドに追い付かれてしまうし、
逆に遅すぎれば、その腕のひとふりであっというまに戦闘不能状態にされてしまうところだった。
つまりは作戦を考えなければ勝てない相手ということ。
(ギリギリだったけど、何とかなったみたいね…!)
長いことじっとしていたかいもあって、“呪紋使い”にとっての生命線…SP(スキルポイント)のゲージは完全に回復している。
この世界には“魔法”は存在しない。あるのは“呪紋”と呼ばれる、ちからある紋様を生かしたシステムだ。
私のほっぺたにあるペインティングや、白のパンツスタイルに染め抜かれている鮮紅色の模様ががそれのこと。“呪紋使い”はそこからふしぎな力を引き出してくる…という設定になっている。
…敵がスキルの射程距離に入った。
さっき回復優先から切り替えたばかりの、とっておきの杖をかまえる。
あとはもう、心おきなくぶちかますだけだ。
思いきり息を吸い込む。スキルを発動!
「メライローームっ!!」

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『The World』。
それは、2010年現在のところ、世界でもっともメジャーな多人数型オンラインアールピージーゲーム---MMORPGのこと。
私が中学生になりたてのころ、とあるコンピュータウイルスが世界中のネットワークを停止させてしまった。
それが『Pluto Kiss』と名付けられた、史上最悪のサイバーテロ事件だ。
その時、ネットの世界は、いちど全てがこわれてしまった。だから、それまでたくさんあったMMORPGはすっかり一掃されてしまったのだそうだ。
そしてネットが復活するまでの空白の2年間(『新たなる神々の黄昏』というかっこいい名前がついている)の直後、唯一登場したのが『The World』だったから、ネットゲームをやりたくてうずうずしてた人は皆これに飛びついた、というわけ。
プレイ人口は世界で2000万人。何だか実感がわかないくらい大勢の人々が、今もこの“世界”を楽しんでいる。
私も、その中のひとりだ。
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