「まるちゃんさ、今度髪の毛切ったら、僕に頂戴」
「どうしてですか」
「お守りにするから
あっ、僕の髪の毛もあげるからさ
あとさ、爪も切ったら、爪も頂戴ね」
「・・・なんか、私、もうすぐ死んじゃうみたいですね」
じくさん、爆笑
「形見じゃないから、お守りだから」
・・・似たようなもん
と、思うのは私だけ?
「歯も欲しいけど、まだ抜けないでしょ」
「当たり前じゃないですか
もう乳歯もありませんし、親知らずは生えませんし」
「僕は、4本抜いたよまるちゃん、生えないの」
「あのね。私、20歳の時に、奥歯が痛くなって
『あ~親知らずが生えるんだな~』って、かかりつけの歯医者さんに行ったのね。
そうしたら、先生が
「・・・まるさん。12歳臼歯が生えますね」
って・・・。
えーっ
20歳で12歳臼歯ですかー
・・・って、先生、今まで足りないことに気が付いていなかったのって」
「そんなことあるの」
「・・・あるみたいです」
あるみたい、といいますか、私、本人ですからあったんです。
「まるちゃんの歯は、大器晩成なんだね」
「えー歯まで大器晩成なんですか」
歯まで・・・の理由
子どもの頃から、幾度となく言われてきた言葉。それが大器晩成
「僕だって、若い頃よく言われたよ。大器晩成」
「・・・それで、晩成しましたか」
「まだ」
「ぶはーっ
じくさんの年で、まだ、晩成しないのですか」
「まだ、晩成しないから、元気に生きてるんだよ、きっと」
「・・・なるほど
じゃあ、晩成した途端に、死んじゃうのかな」
「多分ねだから、晩成しない方がいいかも」
「晩成しないで、死んじゃうっていうパターンもありますよ。
その時は、今世諦めて来世、ですね」
晩成、した方がいいのか、しない方がいいのか・・・どっちなんでしょうね
・・・って、じくさん、私の歯まで欲しいって思ってたのちょっと、怖い