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「坂道」     by hakogame
小さな坂道は
さわやかな風のとおり道です。
秋が通ってゆきます。
とっこちゃんは テッテテ。
あんよあんよして、上を見上げます。
コロコロ
ころがってくるものはなあに?
お人形がころがってきました。
茶色の落ち葉をいっぱいつけて、ころがってきました。
とっこちゃんは、かがもうとしてしりもち。
でも、ちゃんとペタッと人形をつかみます。
そこへ、知らない男の人がとおりかかりました。
とっこちゃんは、うんしょ。
立ち上がって、その人を見上げます。
うん?
目が合っちゃって、男の人はにっこり。
すると、とっこちゃん「こえ!」
人形を差し出して、「これ」と言ったのです。
「お人形さんね。キミの?」
でも、とっこちゃんはおかまいなし。
「こえ! こえ!」と繰り返します。
もみじの手で、お人形を振っています。
男の人はお人形を押し付けられてしまいました。
「たたたっ たたたっ」
とっこちゃんは、歌いながら テッテテ。
むこうへあんよして行っちゃいます。
「あの・・・」
男の人はとり残されて、葉っぱだらけの人形を持って、
立ちつくします。
自転車に乗った女の子が、くすくす。
笑ってとおり過ぎました。
男のひとは困って、つくづく。
人形を見ると、あれあれ?
それは、ただの木のきれっぱし。
たしかにお人形だったけど?
まほうかな?
あのコはどこへ行ったのかな。
どこへ帰っていったかな。
男の人は、ちょっと周りを気にしながら、
木ぎれをコスモスのお花の横に、
そっと置きました。
そして、口笛。
ピッ。
風がさっと、とおって行きました。
         (おしまい)