国家存亡の危機と飢えの恐怖、この160年、日本人は、それで働いてきたのだ。


考えてみれば、江戸時代は日本人はのんびりと生活していた。

それが幕末の1853年に、黒船がやってきて太平の夢が破られた。もしかすると、日本も中国のように西欧につぶされるかも知れないと考えた。それ以来突っ走ってきた。その行く先が第2次大戦での敗戦である。


そのショックから、今度は飢えるかも知れないと思った。それで突っ走ってきた。それが奇跡の経済成長である。


それが1990年の初めで気がついた。こんなに働いてどうするのか。戦後は45年、黒船からは150年、働きづめであった。


日本のバブルは、世界のさきがけになった。今次の世界的バブルは、日本の後追い的な動きである。飯田経夫という人(元名古屋大学教授)が言っていた。先進国は、資本主義という本来人間に不向きなことを、無理に無理を重ねてやってきたと。


今後も途上国は先進国がたどってきた道を歩むであろう。TVと自動車、コンピューターを一家に一台、もしくはそれ以上普及するまでは。しかし、それ以降は彼らにものんびりの時代が、やってくるのではないか。もちろんそれには当分時間がかかるだろうが。


もちろん、地球に氷河期がやってくるとか、隕石が落ちてくるとか、環境がもっと破壊されるとか、人類にとって緊急を要することが起きれば別である。


従って、日本人は1990年以降、人間が豊かになったらどうなるかという実験を、世界に先駆けて行っているのである。これからしばらくは、江戸時代への回帰である。若者のフリーター化はその現われである。


しかし、資源が無くてどうやって食うのか、という問題は密かに潜在しているのである。食いつぶしだけでは、いずれ資産が底を尽くからである。失業とかワーキングプアーとかがその兆候を示している。

人類最初の実験を日本人がやっていると見ることができるのである。