(題名) 日本人論:明治から今日まで
(出版) 岩波書店 1994年
(著者)南博 一ツ橋大学名誉教授、日本心理センター所長
(内容)
著者は、明治以来の千数百の日本人論を時代ごと、傾向ごとに分類して、その中の代表的なもの数十冊を取り上げて、その要約をして紹介している。まずは明治、大正、昭和(戦前)と分けて、戦後は占領期と現代とに分類している。著者が言うように、言わばこれは日本人論の集大成である。
個々の内容は、著書に当たっていただく他はないが、その労力は大変なものである。
(私の感想)
これだけ沢山の日本人論を総括した本は無い。一般にはあまり知られていない、言わば埋もれている作品に再度脚光をあびせるだけでもその役割を果たしている。著者自身も日本人論を何冊か著している。そして、それを大きなくくりをして分類していて、日本人論の流れがわかりやすい。それがこの本の長所である。
逆にその欠点は、統一性というか一貫性が無く、テーマ性に欠けるというか、百科全書的羅列的になってしまっている。これはこれだけの大著には無理な注文かも知れない。
それにしても、実に多くの日本人が日本人を論じている。そのかなりの部分が共通している、即ち集団主義であることや上下関係、たて社会であること、内と外を区別すること、西洋への過剰反応があるなどである。
しかしながら、人間のすることには限界があり、それでもなお日本人とは何かがなかなか把握されることはない。つまり、何事も見方に応じて変わってくるということ、更には対象が時代とともに変化することである。集団主義も考察の対象によっては別の行動パターンをとることもあるし、大企業はたて社会でなく逆に横社会であると見ることも出来る。また最近の日本人の個人の動きは、多分に個人主義的であると言えよう。
またこのように沢山の日本人論があるということ自体が、日本的であるとも言える。つまり自己意識過剰の国なのである。そうしたことが大筋でわかること、更にはある日本人論がどういう位置付けにあるかがわかることが、この本の一番の役割であると言えよう。
(おすすめ度)****
(読む効用)
1多くの代表的日本人論が要約して紹介されている
2明治以来の日本の動きと日本人論の動きが並行的にわかる
3日本人の特徴がわかる