地域を巡り、そこに暮らす人たちから話を聞く山陽新聞社の「吉備の環
プロジェクトチーム(PT)」で10月6~8日、合計特殊出生率が2019年
に2・95と全国トップクラスの勝田郡奈義町、移住者が相次ぐ英田郡西
粟倉村を訪ねました。出会った移住者の言葉から、地域に根付く”包容
力”が伝わってきました。
(この記事は10月10日の【山陽新聞第2全県】からの紹介です)
「謝ることがなくなったんですよ」。5年前、横浜から奈義町に移り住んだ
町森林組合職員の長田有衣子さんに子育てのエピソードを聞くと、こん
な答えが返ってきました。
横浜で1人目の子どもを産み、2歳まで育てました。公園に行くと、幼い
せいで遊具で上手く遊べないわが子を、年上の子がうとましく思ってい
るように感じ「ごめんなさいね」。けがで連れて行った総合病院では、子
どもがなく声を「うるさい」と怒鳴られて「すいません」。
謝ることとセットのようだった子育てが、奈義町では一変しました。公園
では年上の子が「僕が面倒みるよ」と寄ってきました。病院では知らない
人があやしてくれました。奈義町は子ども医療費の無料化など行政の
支援も手厚いが、「大人に優しくされた子どもが成長して同じようにする。
そんな伝統が子育てしやすい雰囲気をつくっているように 感じます」と
長田さんは話します、
次に訪れた西粟倉村で、「移住者がどんどん増えているから、よそ者扱
いされたことはないですよ」と教えてくれたのは、6年前にイスラエル出
身の夫リファさんと住み始めたヨガインストラクターの田辺亜希子さん(横
浜市出身)です。
生活が落ち着くまで、昔から住む隣人たちに支えられました。住居にな
る古民家の修復、畑のこしらえ方、雪のかき方などを優しく教えてくれま
した。「雪が積もる厳しい冬を協力して乗り越えてきた住民の絆が、移住
者を受け入れてくれるベースになっているのでは」と田辺さんは話します。
「人がいい」―。町や村の良いところを尋ねると、必ず最初に返ってきた
言葉です。住民に出会うたびに実感し、地域に活気がある理由が分か
った気がしました。