昨日、イタリア10年国債利回りがユーロ導入以降初めて7%を超えた。
10年利回りの7%は自力で資金調達できるぎりぎりのレベルで、所謂危険水準とされていた。

下のグラフは、ギリシャとイタリアの10年利回りの推移である。
水準を合わせるために、イタリアの利回りは10ヶ月程度後退させた。
(出所)Bloomberg
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今後、イタリアの利回りの上昇が止まらず、イタリアがギリシャ同様マーケットから締め出されることになるのだろうか?
もしそうなれば、イタリアがEU圏で3番目に大きい経済大国であり、世界で3番目に借金の多い借金大国であることを考えれば、被害が甚大でないことは容易く想像できる。


僕はイタリアがギリシャのようになる可能性は30%程度の確率だと考えている。
これは、通常であればギリシャのようになるはずはないのだが、当局の対応で何かを間違えてしまったり、ファンダメンタルズ以外のリスクが突然発生してマーケットの歯車が狂ってしまえば、一気に破滅へ向かってしまう、というレベルだ。


イタリアが通常であればギリシャのようにならないと考えられる理由は、イタリアの財政収支が良いからだ。
下のグラフは、PIIGSと言われる国にドイツ、フランス、日本を加えた財政収支(対GDP比)である。(出所)Bloomberg (単位)%
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ご覧の通り、イタリアの財政収支はドイツに次いで良く、フランスや日本よりも良い数字である。
イタリアはここからさらに緊縮財政を進めると言っているのだから、もはや何の問題もないかのように見える。

では、イタリア国債はなぜここまで売られてしまったのか。

理由は2つある。

. イタリアの債務残高が非常に多いかつ、2012年の償還額が非常に多いこと
. イタリアの政情不安

イタリアの債務残高は約2兆ユーロあり、世界で3番目に借金が多い国である。
下のグラフは年別のイタリア国債の償還額である。
(出所)Bloomberg (単位)百万ユーロ
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ご覧の通り2012年に償還を迎える債務が非常に多いことがわかる。
また、月別に見ると、2012年2月が500億ユーロ、3月4月で各450億ユーロと非常に多い。

イタリアは近い未来に爆発するかもしれない大きな爆弾を抱えており、マーケットはとても神経質になっている。
そんな中、先日ベルルスコーニ首相が辞任する意向を表明(実質内閣不信任)、緊縮財政法案の通過が遅れるかもしれない、など政治がとても不安定だ。

今やまったなしかつ、ミスもできない状況にもかかわらず、イタリアの政治がこのような状態なのでマーケットはイタリア国債にいっせいに売りを浴びせている。


この状態を乗り越えるためには、より早く緊縮財政法案を通過させ、新政権樹立を目指すべきだ。

またこの他にも、EFSFの拡充について具体的で実効性の高い案が出てくれば、これもイタリアをサポートするだろう。


しかし、僕は、実はここにも落とし穴があるような気がしてならない。

それは「フランス」である。

EFSFの1兆ユーロまでの拡充で十分かどうかという問題もあるが、フランスが格下げされてしまえばそもそものEFSFのモデル自体を大きく変えなければいけない。
EFSFはAAA格を持つフランスの信用力を前提に作られているため、フランスが格下げとなったら、根本が変わってしまうことになる。

欧州危機のフェーズイタリアでは、当該国イタリア以外に、フランスが鍵を握る存在になってくるかもしれない。

フランスの格下げが、イタリアの炎上そして世界経済の破滅へのトリガーにならないことを祈るばかりである。


再度断っておくが、この記事に書いたリスクシナリオは、30%の確立で起こる可能性があると僕は考えており、起こるとしたら大量償還を控える2012年2月頃までの間だと思っている。



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