僕は10年後に通貨ユーロが存在している可能性は低いと現時点では考えている。
ギリシャから「国民投票の実施の可能性」というニュースが流れてきた時に、この考えはより強まった。

こう考える理由を先に書いておくと以下の通りである。


通貨ユーロを維持するためには今後EUに所属する全ての国が何かを犠牲にしなければいけない。何をどの程度犠牲にするのかは、一国で決めることではなく、EUに所属する全ての国が納得する一点に落とし込まなくてはいけない。今後、そういった議論を長い時間をかけて行っていくのだろうが、その途中でユーロを維持するインセンティブよりも、ユーロを離脱するインセンティブが徐々に大きくなるだろう。また、なかなか纏まらない議論は、後者のインセンティブを助長することになる。


まずは、統一通貨ユーロを導入している今の現状を考えてみよう。

ユーロを導入することによって変わったことといえば、域内貿易で為替リスクが発生しないことである。
これによってドイツは大きな便益を得た。2010年のドイツの輸出総額に占めるEU圏の割合は約60%に達する。
国別に見ると、フランス・オランダ・イタリア・オーストリア・ベルギー・スペインの順で高い。この6カ国だけでドイツの輸出の36.2%程度を占める。

1つ目のチャートは通貨ユーロ導入(1999年1月1日)以降のドイツの貿易収支、2つ目は同期間のイタリアの貿易収支である。
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これを見てわかるように、ドイツはユーロ導入により着実に貿易収支を伸ばした一方、今財政問題で苦しむイタリアはユーロ導入以降貿易収支が右肩下がりになっている(貿易赤字に転落している)。

もしEUで統一通貨ユーロを導入していなければ、ここには為替メカニズムが発生し、ドイツマルク高イタリアリラ安が進行し、通貨安の影響でイタリアの貿易収支は改善するはずである。
統一通貨を導入しているが故に、為替メカニズムが機能せず競争力のあるドイツと競争力のないイタリアの格差は開き続けることになる。

言い方を変えると、ドイツは統一通貨ユーロのおかげで、イタリアから収支を奪っていると言う事ができる。
これが意味するところは、統一通貨ユーロを維持するためにドイツがしなくてはいけないことは財政移転である。
為替メカニズムが発生しないことによるドイツの便益を輸出相手国に移転する必要があるだろう。

逆にイタリアなど財政移転を受ける側は緊縮財政を受け入れる必要があるだろう。
収支だけもらって放漫財政を続けることが許されるはずがない。

今話題になっているギリシャももちろんイタリア側の国である。

10月26日に決定したギリシャ救済パッケージ、つまりギリシャ債の50%減免というのは、まさにドイツ側からの財政移転と同じ効果となる。

ギリシャは財政移転を受ける代わりに緊縮財政をする義務があるのだが、ご存知の通りギリシャは緊縮財政の受け入れに難色を示し、首相は国民投票を行うと言い出し、国民は大規模なデモを行っている。
また、10月26日に決定したギリシャ救済パッケージを最終合意するまでにかかった時間や経緯はすでに見てきた通りだ。

ギリシャ一国を救済するのにこれほどの時間と労力を強いられ、さらに実際に運用されるかどうかもわからない。

長い時間をかけてようやく1歩進んだかと思えば、すぐに半歩さがってしまう状況、かつ、議論が進むにつれて明らかになる統一通貨ユーロ維持のために受け入れなければいけない犠牲の大きさを考えると、しだいに統一通貨ユーロを諦める雰囲気が高まってくるのではないだろうか。



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