EFSF(European Financial Stability Facility)
日本名:欧州安定基金
ユーロ圏諸国の救済を目的とした特別目的事業体。ルクセンブルクに本部を置きEIB(欧州投資銀行)が資金管理業務と運営支援を行う。
資金支援が必要となったユーロ加盟国向けに融資するため、最大で4,400億ユーロの加盟国保証付きのEFSF債を発行できる枠をもつ。

現状、EFSFの融資能力は2,500億ユーロである。
今週中にもスロバキア議会はEFSF拡充案を可決させると見られ、そうなれば融資能力は4,400億ユーロまで増える。また融資だけでなくユーロ圏の国債の購入などの機能も可能となる。

現在、話題の中心となっているのはこの機能強化でありレバレッジとは別の話である。

ちなみにギリシャの債務合計(債券・ローン)は3,500億ユーロ程度で、PIIGSの債務合計は3兆ユーロ弱である。

EFSFの支援能力を4,400億ユーロまで拡充できればギリシャの債務残高を超える支援能力となり、レバレッジを活用して2.5~3兆ユーロまで強化すればPIIGS全体の債務残高をカバーできるというわけだ。

ギリシャが潰れたとしても100%減免されるわけではないので、実は現状の2,500億ユーロでもなんとかなるレベルである。4,400億ユーロなら十分安心できるレベルでありレバレッジなど正直そこまでする必要はあるのか、と思ってしまう。

しかし、マーケットの不安心理に火がつくと信用収縮の連鎖による被害が出てくるので、4,400億ユーロに拡充してマーケットに安心感を与えることは重要なのだろう。
また、危機がイタリアにまで侵食してきた場合は、レバレッジ活用という方法をとらなければ安心感には繋がらないだろう。

さて、EFSFのレバレッジだが、いったいどういう仕組みで行われるのか。
これにはいろいろな方法が議論されるのであろうが、現状よくニュースに出てくるのはECBを使うパターンである。むろんECBのトリシェ総裁はこの方法を否定しているが…

僕は専門家ではないので詳細にはわからないが、ECBによるEFSFのレバレッジの仕組みは、僕らがFXを使う場合と同じような仕組みではないかと考えられる。つまり、FX会社が僕らに信用を供与するのと同じように、ECBがEFSFに信用を供与するわけだ。

FX会社、例えば外為オンラインがECBであり、個人投資家である僕はEFSFと同じ立場だ。

まずは僕がFXを取引する時のことを考えてみよう。
僕は100万円しか持っていないのにそれより大きな金額で取引をしたいと考えている。
その時、外為オンラインに有効証拠金として100万円差し入れれば、この100万円(厳密には100万円-必要取引証拠金)分の損をするまで、僕は外為オンラインからお金を借りることができ、外為オンラインを通して為替取引をすることが可能となる。

EFSFの場合、拡充された4,400億ユーロをECBに差し入れることで、ECBからお金を借り2.5兆ユーロの支援能力にするというわけだ。

ECBのトリシェ総裁がこれを拒否するのは当然といえば当然である。
なぜなら、EFSFとはユーロ圏の救済を目的とした基金であり、融資する先は救済されなければいけない国である。
つまり、ダメなものを買うためにお金を貸すということであり、そんなことにお金を貸す人などは存在するはずがない。

トリシェ総裁は「各国政府にはEFSFをレバレッジする能力がある」とその役割を政府に負わせようとしている。
ECBのマンデートは唯一「物価の安定」であり、そういった面からも救済目的にECBがEFSFをレバレッジする道理はない。

ただし、各国政府がレバレッジするとなると、またしてもドイツがその役回りを担うことになり、それはドイツが嫌がるだろう。

この問題をスムーズに解決するには、ECBのマンデートをFRBのようにデュアルマンデートに変更し「雇用の維持」であったり「経済成長」等を追加するのが最も効果的だと考えている。

EUという組織を維持していくのであれば、もはや通貨以外の統合も進めて各国政府のコミットメントを強くいていくことは必要不可欠であろう。



iPhoneからの投稿