auからのiPhone販売という報道が出てから、瞬く間に「ソフトバンクの快進撃の終焉」を予想する声が出てきた。
たしかに、auからiPhoneが販売されれば、ソフトバンクの契約純増数に陰りがでてくることは間違いないだろう。
それは一般消費者の目から見れば、au優勢ソフトバンク劣勢と映るのだろう。

しかし、投資家からの目線は少し違うようだ。
auからiPhone販売という記事が出る1日前を起点として携帯キャリア3社の株価の推移を見ていただきたい。
9月21日の始値を起点としたドコモ(緑)、ソフトバンク(オレンジ)、KDDI(黒)の株価チャート(出所)Bloomberg
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投資家は明らかにKDDI株を売っている。そしてソフトバンク株は報道を受けて売られたが買い戻しが既に入っている。

この理由(単なる個人的見解だが)は、以前の記事と今回の記事で書く通りである。

auのiPhone販売はKDDI株の売り材料だろぉがよー
docomoからiPhoneが発売される可能性が限りなく0に近いと思う個人的見解

さて、今回はソフトバンクについて書こうと思う。

ソフトバンクは本日(2011年9月29日)の新商品発表会で、「4G」と銘打った新データ通信サービスを発表した。
投資家はこの発表から、ソフトバンクの今後の携帯事業におけるビジョン、つまり海外戦略を感じ取っただろう。

ソフトバンクが新たに採用する通信方式は「TD-LTE」というもの。
※ 通信方式の詳しい説明は割愛します。

ドコモのLTEサービス「Xi(クロッシィ)」はFDD方式のLTEであり、世界では一般的にこちらが使われている。

ならば、なぜソフトバンクは世界で一般的でないTDD方式のLTEを採用するのか。
それは、世界最大の契約者数を誇る中国移動(チャイナモバイル)がTDD方式のLTEを採用することを決定しているからである。
世界No1,No2の人口を誇る中国とインドは国家単位でTDD方式のLTE採用を後押している。

国内の携帯電話市場を見ると、ドコモが約50%のシェアで圧倒的にリードしており、ソフトバンクの契約台数はドコモの半数にも及ばない。
しかし、次世代の通信方式で括ってみると、ソフトバンクの採用するTD-LTE方式には中国での携帯電話契約台数(7億台以上)が加わるわけだから、ソフトバンクは数の上でドコモを圧倒することができる。

ソフトバンクにはメリットがとても大きい。

①規模の経済を利用してコスト削減ができる
本日の発表会で、通信インフラに関して中国の華為技術(ファーウェイ)が構築を受注したことを発表した。この企業は中国国内でも同じインフラを構築するため、規模の経済が働きソフトバンクにとっては低コストとなることが想像できる。
他にも、同じ通信方式の端末開発において低コストを実現できることが予想される。

②グローバルローミング契約で有利になる可能性
同じ通信方式のため、中国人が日本に旅行に来た時にはソフトバンクのネットワークが利用される可能性がある。
このあたりはまだ不透明な部分は多いが、可能性は相応に高いと考えられ、先般日本の来る中国人旅行者が多いことを踏まえるとソフトバンクにとって大きな収益源となりそうだ。

次世代通信サービスが本格的に展開されるのはもう少し先の話だが、次世代通信の世界ではよりグローバル化が進んでおり、国内マーケットの重要性は低下すると考えられる。その時に微笑んでいられるのは、海外戦略で成功した会社であろう。

(あくまでも企業経営・投資の話だが)もはや国内マーケットの微々たる変化は重要な問題ではなく、auがiPhoneを販売してシェアを伸ばしたところで世界から見ればそれはすずめの涙程度の話でしかないだろう。






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