繊維は糸にして、撚糸や布を作る。その繊維にも科学が凝集されていることがある。繊維と言えば中国産が多い中、もともとは日本の十八番の産業だったらしい。日本でも雨の少ない地域では綿花が育てられ紡績工場が建てられた。

ローカルな話になるが、兵庫県加古川市にはニッケパークタウンというショッピングモールがあるが、ニッケと言えばもともとは紡績の会社であった。そのように、もともと日本では紡績が盛んにおこなわれていた。

ところが、紡績は賃金の安い中国にて生産されるようになり、また衣類への加工も現地で行われる。日本の企業はその製品をチェックし、ラベルを取り付けて自社製品として販売している。そのような流れがおおよその衣類業界における生産フローである。

さて、繊維と言えばデュポン社を思い浮かべることが多いかもしれないが、デュポンと言えば寝具関連で強い。ところが、スポーツの分野では科学が世界をリードしている。例えば速乾性の繊維や発熱する繊維、消臭効果のある繊維などである。このように繊維に特定の機能を持たせたものを「機能性繊維」と言う。

機能性繊維のことを考えると、昔見た映画のワンシーンを思い出す。冬のニューヨーク・マンハッタンを歩く女性はとても厚着をしているが、室内に入りコートと脱げば、冬とは思えないような薄着をしているのである。アメリカでは暖房をガンガンに効かして、真冬でも室内ではTシャツを着ているような人もいるのであるが、それにしても薄着にもほどがあると思った。最近の日本でも、これと同じように、真冬でもコートを脱げば薄着のように見えるが暖かい繊維を使った服を着ている人が増えてきた。ようやく日本もニューヨークのようになってきたのかと思う。やはり、暖かい繊維で薄着をしているように見えると、見栄えが良い。日本人も「もったいない」と「ファッション性」を両立させるような衣類を開発してきているのだと思う。女性はファッション性を重視したい。でも薄着は寒い。このようなお困りごとに対応するような衣類が増えてきたということになる。

このような科学が生み出した機能性繊維は、いろいろな分野のお困りごとに対応している。日本人はお困りごとを解決する能力が高いので、これからも様々な生活シーンでのお困りごとを解決していく機能性繊維が開発されていくことに違いない。その先に新しい日本があるのではないかと考える。