スラヴ叙事詩@新国立美術館 | (新)なごやん

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名古屋からJリーグ アルビレックス新潟に熱い思いを送ります。旺盛な好奇心そのままに、アルビネタに留まらず、鉄道、芸術、SWL(短波・海外放送受信)、昆虫、等々、思いつくまま書いていきます。
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【長蛇の列】

 4月に東京へ出張した時のことです。1日目は午前中だけ、2日目も午前中だけの仕事でした。せっかくの機会ですし、1日目の仕事が終わった後、乃木坂にある「新国立美術館」へ行きました。目当てはアルフォンス・ミュシャ(ムハ)展です。

 

 行ったはよいのですが、入館券を買うだけでこの列です。一方、チケットを持っている人はストレートに美術館入り口へ行くことができます。

延々と続く長蛇の列

 

【出直し】

 結局、その日は諦めて、翌日出直すことにしました。今や「プレイガイド」と称する店舗はなかなか見つからず、むしろ金券ショップの方が分かり易いので4件回りましたが、どこも品切れで手に入らず、ホテル近くにある使い慣れたロッピーで当日券を買いました。何の飾り気もない「いつもの」チケットです。

 そして翌日、ホテルの朝食(サービス)をしっかり食べ、午前の仕事が終わるや否や、昼食抜きで乃木坂駅へ急ぎました。ここからストレートに美術館へ行くことができます。

乃木坂駅から美術館へ向かう(右下は前日ロッピーで買った当日券)

 

 東京はちょうど桜の季節でした。美術館ではチケットを買うために並ぶ必要もなく中に入りました。今開催中の展覧会の看板が並んでいます。

美術館の外と中

 

【アール・ヌーヴォーのムハ】

 これまでの私にとって、ムハと言えば、サラ・ベルナールのポスターなど、アール・ヌーヴォーの旗手というイメージじでした。

ジスモンダ(1895)(リーフレット)

 

 しかし、今開催されているのは「スラヴ叙事詩(Slovanská epopej)」の20点を一挙に公開した、むしろ、ムハの「スラヴへの回帰」に照準を合わせたものです。

本企画のちらし(A3 2つ折り)

 

【ボスニア=ヘルツェゴヴィナへ】

 ムハの時代、ムハの祖国チェコオーストリア=ハンガリー二重帝国の支配下にありました。

オーストリア帝国切手(肖像はフランツ・ヨーゼフ1世)(私の切手帳に保存)

 

 そんな中で、当時パリにいたムハにパリ万博でオーストリア帝国が支配していたボスニア=ヘルツェゴヴィナ館の内装の依頼が舞い込みます。ムハはボスニア=ヘルツェゴヴィナへ取材に訪れますが、そこで目にしたのは虐げられたスラヴの人々でした。

 

【スラヴへの回帰】

 ムハは1910年、チェコに戻り、残りの人生をスラヴの人々に捧げようと、大作に挑みました。それが10年をかけて完成させた「スラヴ叙事詩」です。

 

 大きなキャンパス20点の全てが展示されていました。チェコ国外での公開は初めてだそうです。スタートはリーフレットの図案にもなっている「原故郷のスラヴ民族(Slované v pravlasti)」です。

 

 音声ガイドではその20点全てについて解説されていて、とても参考になりました。というか、私としてはガイドがなければ理解不可能だったと思います。

 

 音声ガイドの視点は4月に放送されたEテレの日曜美術館のものとやや異なり、Eテレではムハの作品全体を通した解説だったのに対し、音声ガイドではスラヴ人ムハを意識した内容でした。

東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドゥシャン(1923)(リーフレット)

 

 このシリーズの最後の部屋では撮影が許可されていました。

撮影可能コーナー(この混雑)

 

 「スラヴ叙事詩」最後の作品は「スラヴ民族の賛歌(Apoteóza z dějin Slovanstva)」です。右下には古いスラヴ民族が描かれ、中央の明るい部分には自由を得たスラヴの人々が独立を祝う喜びの様子が表わされています。

スラヴ民族の賛歌(1926)

 

【ヴルタヴァ川の流れ】

 Eテレでは触れていませんでしたが、美術館の解説にはムハがベドゥルジヒ・スメタナ(Bedřich Smetana)の交響詩「わが祖国(Má vlast)」からの「ヴルタヴァ(Vltava)」の影響を受けたとありました。そして、この展覧会では音声ガイドの中で「ヴルタヴァ」が時折流されていました。

 ヴルタヴァは日本ではドイツ語のモルダウ(Moldau)として知られ、私の高校時代の音楽の教科書には岡本敏明による歌詞(♪ ボヘミア潤す川よ 豊かな流れモルダウ・・・)が付いていました。私の大好きな曲でもあります。

 私の資料室 物置き部屋をみたら、中学生時代にコツコツ貯めた小遣いをはたいて買った、今はなきエンジェル・レコーズのLPがありました。巨匠フルトヴェングラー指揮するウィーンフィルの演奏です。

往年の名指揮者、フルトヴェングラーによるモルダウ(B 面)(モノラル10インチ)

 

【名残はつきねど】

 スラヴ叙事詩のコーナーへは途中からショートカットして入ることができました。私はこの美術館を出るのが惜しく、回廊のように何回も何回もグルグル回って観直しました。

 昼食抜きでしたが、夕方になっても空腹感よりここに残りたい気持ちが勝ります。

 しかし、翌日は仕事です。帰らないわけにはいきません。仕方なく外へ出ると、入場券を買う人の列がまだ長く連なっていました。閉館時刻前30分になろうとする時ですが。

 

 ここ最近で最も興奮し、最も感動した・・・涙が出るくらい感動した展覧会でした。

 

 この企画は6月5日まで開催されていて、巡回の予定はありません。最終日が近づいてきました。チャンスがあればもう一度行ってみたいと思っています。

 

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