葛城一族の没落がここに始まります。
そのようななかで飯豊の父、押磐は
懸命に生き延びる道を探り始めます。
紀元456年頃のことでした。
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すべては平群真鳥が仕組んだことであった。
幼い眉輪王をそそのかし、亡き父の仇である穴穂を殺害したあとは、
叔父の黒彦王とともに円大臣の館へ逃げるようにと教唆したのである。
当然、二人の王をかばった円の行動は大王家への反逆とみなされ、
屋台骨を失った葛城一族の力は今後、急速に衰えていくことになる。
「じじさま、父上や母上、ふたりの弟のことが心配です」
「それはじじとて同じこと。押磐様や御子たちはご無事であろうか・・・」
蟻の蟄居が言い渡されたのは、この数日後のことである。
「稚武さま、あとは押磐王のみでございますな」
平群真鳥はまるで愛人であるかのように、稚武のそばに近寄り、耳元で囁いた。
「冬が来る前に押磐を狩りにでも誘うか・・・」
真鳥の言うように、稚武は兄弟のことごとくを殺害し、
群臣はもはや恐れおののき、楯突く者は誰一人としていない。
それでも穴穂大王が押磐を厚く信任していたように、
その温厚な人柄をもって押磐を次の大王にと願う声も陰ながら囁かれている。
一方で、押磐はむしろ稚武が大王になることを認めることで、
生き延びる道を模索していた。
飯豊は押磐の子ではなく、妹だったという説もあります。
系図の通り、飯豊の二人の弟王も将来、大王(天皇)となるのですが、
この小説のクライマックスがまさにその経緯にあるのです!!!
もう少し先の話ですがお楽しみに!!