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『主を七回変えるくらいでないと、男ではない!!』

大いに語弊がありそうですが、つまりそうして己の腕を試し、また成長してこそ一端の男である。
高虎はそう云ったのでしょう。


その生涯を綴るのは、
読み易く、戦闘のシーンではその語彙力と想像力を遺憾なく発揮しながら、一方病みついた高虎を
「ふとんの住人」(㊤P387)
などと可愛らしく表現する
安部龍太郎氏。


隠居していた高虎が豊臣秀長に見出される所から始まり、天下の静謐に尽力し、家康と同じ75で大往生するまでの生涯が事細かに記されています。


高虎の恋

「迷いや未練がないわけではない。だが今は高虎のもとへ行くことより、高虎に尊敬される生き方を選びたかった。」(㊦P163)


高虎の覚悟

「権力の持つ魔性の力が人を酔わせ、傲慢にも不安にも猜疑心のかたまりにもする。それゆえ大儀を見失わない者が側にいて、魔性の暴走を止めなければならないのである。
(それが自分の役目だ)
高虎はそう思い、家康にも常に直言するように心がけている。そのことが時には遠ざけられる原因にもなっていた。」(㊦P374)


天下の政に密に携わったばかりに失ったもの、変わりに得たもの……。


火坂雅志氏の『虎の城』を読んでから、私は高虎を好きになってしまったのです。


武骨。
それがイイ。
のみならず
彼は知勇を備え
理性・義に厚く、
大局を見
常に“民の為”に生きてきた。


時に疎ましくなる程誠実な男。
かっこよすぎるんです。


の、中でやっぱり嬉しかったのは
真田信繁を讃えるような
次の文(笑)

「高虎は総構えの厳重さに圧倒されそうになった。
このまがまがしいほど戦闘的なかまえは、秀吉が秀頼と淀殿の身を案じてきずかせたものだ。豊臣家の将来に対する不安が、人を寄せつけぬ強大な城壁に露骨なばかりにあらわれていた。

だがその守りの姿勢が、城外に討って出ることをさまたげている。その欠点にいち早く気付き、真田丸という出丸をきずいた信繁の眼力はさすがというべきだった。」(㊦P398)


信繁流石だなぁって
にやけたのは完全な欲目(≧∀≦)


その信繁の最期の戦、大坂夏の陣。
高虎の相手は長宗我部盛親の一軍。

「敵に対する憎しみはない。同じ業を背負い、同じ生き方しかできなかった武者仲間に対する、限りない共感と憐憫があるばかりだった。」(㊦P457)


この戦で高虎は多くの愛する家臣を喪いましたが、それでも天下は治まった。


その天下は、果たして高虎の望んだ形ではなかったが、彼は家康に従い己を犠牲に泰平の番人であり続けた……。


水野勝成や藤堂高吉、
豊臣秀長や関白秀次も皆かっこよく
沢山学ぶ事もありました。
流石安部氏。
次作も買い貯めているので楽しみは続く♪

相変わらず変換が出ない
“おさらぎ”氏。
乞食大将後藤又兵衛以来でした。

最初は、まぁ読みにくい。
何度も同じ文を辿り、
この台詞は誰の台詞なのか?
と悩まされつつ
故に遅々として読み進めました。


大坂の陣に入り
徳川幕府の前に敗れた豊臣政権。

   ...
逃れたらしい豊臣秀頼は
さてどう落ちて
どこへ逃れたものか。

逃げる者と追う者。
“ホンモノ”と“ニセモノ”。
偽る者と、さて、
真実 とは。


タイトルは 豊臣秀頼 なのに
主人公は秀頼であって
秀頼でない。
不思議な物語です。


色々な人物が出てきます。


まさかあの織田有楽斎に忰が居て
彼がかような働きをしたと
誰が予想できようか。


煙のない全くのフィクションでなく
小さな焔から生まれた噺だからこそ
なお面白い。

最後はある切なさと
悲しみと、喜びに包まれ
思わず駅のホームのベンチに座り
読み込んだものです。
やはり手堅い、
おさらぎワールド。


“もし”を辿り、
点を繋いだ
夢でない、
夢物語。
「矢倉の屋根を見るがよい。むらがっておるスズメ、あれが、おぬしらさむらいというものとすれば」

忍びは“フクロウ”だと言う。

「忍者はフクロウと同じく人の虚の中に住み、五行の陰の中に生き、しかも他の者と群れずただひとりで生きておる。」(P196)


過去に初めて本書を読んだ時、
なんてかっこいいのだろう
と鮮烈に思った事を覚えています。


葛籠重蔵。
その男こそ、私の理想とする忍者。


ひたむきに孤と闇に生き、しかし五体を巡る熱い血をも持ち、そこに自信と誇りを持っている。


幾つかの忍者を題材にした物語を読んできましたが、やはり重蔵が一番理想的。


重蔵の生き様の中で紡がれる司馬氏の世界観がまた読むものを魅了します。


「欲望が誕生し、燃焼し、そして死滅する連鎖を、生涯のうち何度くりかえして人は死ぬのか」(P222)


そう思うおんながあり


「重蔵は男じゃ。男である以上、いつかは愛した女にも飽きるが、しかし仕事には飽きぬ。男とはそうしたものじゃ」(P251)


そう思うおとこがあり。


「人のいのちも風のごとく虚仮ゆえ、目に見えはせぬ。ただそこに事実としてあるのは、人の生涯の行動のみじゃ。これはたしかに、どの者の目にも見ゆる。

(中略)

おのれのたてた生き方が、当人にとって美しければそれでよい。それぞれのいのちを、思うさまに生きていってよいことじゃ。」(P383)


皆が各々に生きているのだから、他人の人生に口を挟む事は誤りである、と云う。


司馬氏の本はいつも目が覚めるような価値観を教えてくれます。


忍びという生業に陶酔さえしている重蔵が、最後に選んだ道とは。


この魅力は、読まねば分かりません。


一頁捲る度に私の忍者生命が終わりに近付く気がして。忍勤めの終わりに読むにはぴったりな物語でした。