第28話
フィリス先生が言ったこと。
系統能力の覚醒。今日の授業で系統能力については教わった。
大きく分けて6つくらいにマインドの能力が分類できる。
「レッダー君、系統能力って研修で教わったかしら?」
フィリス先生は地味な線香花火を楽しみながら、レッダーに微笑みかけた。
「記憶力を試しているんスね?!上等ッスよ!分類不能な特殊能力は除いて、思念と破壊とスピード的なヤツと…あと色々」
「…くぅ~ん…」
コーンは恥ずかしそうに俯いた。
「そ…そうね。全部覚えなくてもそう困ることじゃないけど、ちゃんと復習しといてね」
フィリス先生はしまったという顔をした。
「オイラのトニーは思念系だよね~?」
「そーなるんやろな」
ランセットはトニーを抱っこしながら、思念系アピールをしてきた。
「そうね。相手の精神に干渉する攻撃が出来るわ。逆に相手が思念系のマスターでこちらよりレベルが高ければ、攻撃を仕掛ければ逆に返り討ちに遭うこともある…。遠隔で簡単に倒せるのは長所だけど、ある程度レベルが高い相手には効かない」
オレは記憶を辿ってみる。
スカイブルータワーで、ランセットは敵を攻撃しようとして返り討ちに遭った。逆に、敵の思念系攻撃はオレに無効だったようだ。
ん?オレはその敵よりレベルが高い思念系のマインドマスターってことになるのだろうか?
「思念系のコマンドはそうでないマスターにも存在するわ。潜在的なものとして普段は封印―――眠っているの。例えば…」
そう言ってフィリス先生はトニーに目を移す。
「トニーさんはマインドとしてはいい意味で規格外だけど、テレパシーを使ってみんなとやりとりできるわよね?」
さん……
「ライバーやコーン、ケアリーは普段喋らないけど―――意思の疎通くらいなら、ある程度レベルが上がれば出来るようになるはずなの」
あ!
リュニオン状態になると特に。そうでない時も時々、ライバーと心の中で会話が出来る。
それは、オレもランセットほどじゃないけど思念系の系統能力が使えているということになるのか!
―――そういうことなんだね、ディール!
頭の中に、ライバーの声が響いた。
実体のライバーに目を移し、オレはうんと頷く。
「そしてもっとレベルを上げれば、相手からの思念系攻撃を全部シャットアウト出来るようになる。それどころか、返り討ちにすることも出来たり、操ることも出来たり。防御だけじゃなく、攻撃のバリエーションも増えるわ」
「へぇ~、すごいんだな、ランセットニー!」
レッダーが合体ネーム(?)でランセットに感嘆する。
「ちょっと待ってください!オイラは思念系攻撃出来るけど、相手にもよくやられちゃうのは弱いってことなんですか?」
ランセットは確かに、思念系攻撃で重要な要でありながら、よく反撃を受けて頭痛そうにしているイメージがある。
「う~ん…簡単に対策を考えるなら、どんどんMAを使っていって、ランセットニーさんのレベルを上げまくることね!」
「そこ、ひっぱるの?!」
リカがでかい声でフィリス先生にツッコミを入れるが、話を中断されたくないのか全員がリカのツッコミを無視した。
「あとは色々な系統能力を習得して複合させたりでオリジナルの技を生み出す!例えば、『破壊』の系統能力が使えるマスターは、実際に物理攻撃で相手に攻撃することも出来る。だけど『思念』の系統能力も磨いて一定以上のレベルにしておけば、ただの思念波攻撃じゃなくて相手の精神をどんどん破壊していく強力な攻撃手段にも変わってくるわね!ホラ、身体の傷より心の傷って言うでしょ?」
なるほど…奥が深い!
エキル兄ちゃんのアストラルディストーション……だっけ?あれも何か色々な能力を複合して生み出した技なんだろう。よく分かんないけど。
「だから、各系統能力を覚醒させて使える状態にしておくことは、マインドマスター同士の戦いで優位に立つために不可欠なことだと言えるの。自分の系統能力をとことん突き詰めて上げておくことも大事だけど、防御も必要でしょ?それが、スピードで回避することだったり。物理的な防御力を上げることだったり。もちろん、思念を上げて精神防御もね?」
一同、研修では聞けない突っ込んだ解説をしてくれるフィリス先生に釘づけになっている。花火をしているのは―――フィリス先生だけ。しかも、まだ線香花火。何本目か覚えてないけど、長持ちだな…
「フィリス先生、あたしとケアリーはどの系統になるんですか?」
リカが心配そうにフィリス先生に質問した。
「ふふっ…そうね―――教えない」
「え?!ちょっ……!それ、どうしてですか~?!」
慌てふためくリカは置いといて、オレは冷静に質問する。
「フィリス先生には分かる、ということですよね?じゃあ、一体どうして分かるんですか?」
「――――――あ」
リカはぽかんとしている。
「さすがね、ディール君。まず私は、抽出時にあなたたちのデータを見ているの。だから、それぞれがどのカテゴリーに特化しているのかが分かるわ。でも、それは本来、誰かに教えられたり示されて従うものじゃない。自然に生きて、自分の気持ちいい場所が…やりたい・進みたいと思えるものこそが、その人本来の適性だと思うの。だから、例えばディール君が『破壊』に特化しているわ…と私が言って、破壊ばっかり伸ばしたり、それ以外のことばっかりレベルを上げたりってのは、あまり自然じゃないわよね?それよりも自由にさせて、発想させて。そうして習得したものこそが大きな意味があると思うし、精神力の絶対値も変わって来るわ。だから私はみんなの系統能力を知ってる―――でも、できれば教えたくない。そう思っている。トニーさんは別ね?思念系なのはみんな誰が見ても明らかだし。でもやっぱり、本来の系統能力だけじゃなくて他も色々組み合わせていったほうが、レベルが低くても強力な技になることが多いの。あのお姉さんも、レベルはかなり高いんだけど、スカイブルータワーでは敵に思念攻撃でやられて気絶させられてたって聴いてるしね?」
「あのお姉さん……あ!」
リカは思い出したようだ。
あの時、スカイブルータワーでトリさんとタッグを組んで、オレはリカを救出した。
レッダーも、トライテクノスでコーンを抽出した際にトリさんと会っている。
唯一会ってないのはランセットだけ…ってことか。
「自分の好きなハンバーグをいっぱい食べるか、トマトやピーマンもちゃんと食べるか。選択は俺たち次第ってことか……」
レッダーがよくわけの分からない例えで納得している。
ハンバーグはオレも好きなんだけどね。
そしてランセットはこう訊いた。
「でもどうしてフィリス先生はそれをオイラたちに?今まではあんまり相手にしてくれなかったのに……」
フィリス先生は少し苦笑いして、こう答えた。
「最初は、子どもだから巻き込まない方がいいって思ってた。だけど、あなたたちは自分たちで色々調べて、サエラまで辿り着いた。マインドのことをもっと知る為…強くなって自分や友だち・マインドを護る為…そう思うと、私に出来るのはこういうサポートかもしれないって考え直したの。それに―――事件は終結していないし、ここサエラ協会だって奇襲される恐れもある。あなたたちも夕方襲われたって聴いたわ。戦う術がないと、命を落とす可能性の方が大きいものね。積極的に戦えってことじゃなくて、最低限自衛は出来て欲しいかしら?」
線香花火は終わった。
辺りは暗い。しかし、夜空には無数の星が輝いていた。
同じ空なのに、イレキスで観る星とサエラで観る星は全然違うようにも感じた。
「でもフィリス先生…系統以外の能力を伸ばす訓練って、どうしたらいいんですか?」
リカがフィリス先生に訊いた。
いくつかドリルみたいなものがあると配布された資料に載ってた気がする。
「そうね…基礎訓練の方法は研修で教えられてると思うけど…?思念だったら、自分とマインドとの心の会話をたくさんするようにしたり。段階が上がれば、他人に向かって心の中で声をかけてみたり。破壊は、広くて安全な場所で小さな石か何かを用意して、壊したいと強く思いながら力を送り続けてみたり。地味だけど、そんな感じかしら?2~3日で直ぐ出来るようになるものじゃないから、何か月かはかかるものと思ってちょうだい」
『へぇ~…』
一同納得しつつも、けっこうめんどくさい感を否めない。
サッカーだって、基礎訓練をしっかりやってこないと試合ばっかりやってても色々ボロが出ちゃう。地味だけど、ガンバってやってみよう!
「明日で研修も最後だもんな…」
レッダーは星を見上げながら、どこか寂しそうに言った。
「研修が終わったら…いや、終わってもさ!俺たち3人で、また時々遊ぼうぜ!」
にっと笑って、オレとランセットをハグした。
研修が明日で終わったら。そのまま自宅に帰って。
明後日からはそれぞれ別の生活が始まる。
ガッコーだって始まるし、サッカーだって始まる。
それは嫌ってわけじゃないんだけど。1週間くらいずっと一緒にいて、なんだか一生分くらい冒険したような気分だ。
「オイラも、ディールとも、レッダーとも。ライバーやコーンとも一緒に遊びに行きたいって思うよ」
「うん!そうだね!明日が終わっても、ずっと友だちだからね!」
「お前ら……」
オレたちは3人で熱く抱きしめ合い、今後の友情を誓った。
背後から忘れかけた存在の声が響く。
「ちょっと~あたしは仲間外れなの~?!」
無視しておこう。(第3章BELIEVE完)


