さて、春香を探したいのだけどそもそも授業を抜け出すなんてことが前代未聞。彼女のオススメのサボりスポットなんて知るわけもない。校内に2人の特別な思い出の場所があるわけでもなく、探す当ては皆無に等しい。しかし、当てずっぽうにとりあえずでも一か所、思いついた場所に向かっていた。
「ま、こういう時のど定番だよな」
階段をあがりきり、他の教室とは異した形の扉を開ける。
厳重かつ単純な柵に囲われ、それとは裏腹にどこまでも自由な快晴の広がる場所。青春の味方、屋上だ。と言っても実際にそんな青春を過ごしてる人がいるわけでもなく、そもそも普段は立ち入り禁止となっており、俺自身も初めて来たけど。
軽く見渡しても春香の姿はなかったが、すぐに見つけることができた。
振り向き見上げると出入り口の屋根に彼女の膝から先がうな垂れていた。
自分も簡素なパイプ梯子を登る。少し期待を煽るスカートをバレないように気にしながら頭一つ抜けたところで、寝そべっているのが彼女であることを確認し、上まで登り切る。
「なにしてんだよ」
「なにって、別に。なんかつまんなかったから」
「いや、つまんなかったって…」
「いいの、誰も何も思わないんだから。でしょ?」
「確かにそうはそうだったけど」
なんと言っていいやら。とりあえず常識的なことを言ってはみたけど、そもそも本能的な直感で追いかけてきた手前、それからどうしたいのかというと特に希望があるわけでもなかった。
「おいでよ」
寝そべったまま春香が隣へ誘う。
「あぁ、うん」
少ししどもどしながら隣へ座る。
「そうじゃなくて」
春香は座った俺の背中側の床をペシペシと叩いて催促する。その意味を汲み取ってゆっくりと、春香と同じ格好になる。
「どぉ?初めて授業をサボった感想は」
「どうって言われても」
改めて見上げた景色、空を広いものだと感じたのはいつぶりだろうか。青一色に染まる眼前はもはや近いのか遠いのか、高いのか低いのか、不思議な感覚に吸い込まれる。
「まぁ、悪くはないかもな」