『ただいまー』

・・・。

家には誰もいない。

鈴木家の一人っ子。

お父さんは去年から別居していて、お母さんと2人だけで暮らしている。

台所に行って、お湯を沸かす。

『何か食べるもの…』

お母さんの帰りがいつも遅いので、基本自分でご飯は作っている。

・・・と言っても最近はカップ麺だけど。

時間があるときはちゃんと料理してるんだからっ!!汗




『あ、もう7時半か』

私はリュックに財布と塾のテキストを突っ込んで、家を出た。

『バス間に合うかな…』

塾は家から徒歩や自転車で通える距離ではないので

基本送り迎えか市営のバスで通っている。

自然と足早になる。




「―――――○○駅行き発車致します―――」

なんとか間に合った…。

後ろの座席に座り、音楽プレーヤーを取り出す。



―――――もう恋なんてしない~~~!!

―――――約束だからね!?


今日の帰り道でアイリと会話したことを思い出す。

…恋なんてしない…か…

そうだよね

どうせ私なんてモテないし。

男なんていらないよね。










プシュ――――ッ

「ありがとうございましたー」

バスを降りて、塾へ向かう。

『こんばんはー』

「こんばんは~」

今日は混んでるな…

私の中学校から通っている人は私を含めてたったの3人。

1人は学校でもクラスが一緒で仲良しの杉田ハナミ

毎週金曜日の授業は塾講師も一緒で、時間帯も一緒。






しかし今日は木曜日なので私1人。





「そういえばさ~」「まじで!?ウケる~!!」

いつも木曜日には塾から一番近いU中学校の男子たちが来る。

正直、騒ぎすぎてうるさい。

でも

他校の男子に見知らぬ女子中学生が「うるさい」なんて言ったらどうなるだろうなぁ…

…想像もしたくない。








仕方なく私はなるべく遠くの席に座って無言で勉強する。

『あっ…』

シャーペンを取り出そうとしたら、床に消しゴムが転がって行ってしまった。

しかもあの他中男子軍団の方に。

(最悪…)

私は静かに立ち上がって取りに行こうとする。





ひょいっ




『!?』

「・・・ん。」

『あ…ありがとうございます…』

拾ってくれたのは、軍団の中にいた1人の男の子だった。







一瞬、時が止まったようだった。

全ての動作がスローモーションになって。







「・・・」「・・・」「・・・」

周りにいた男子たちも固まってしまった。

私はそそくさと自分の座っていた席に戻った。

(…なんだったんだろう…今の…)





数秒経って、また男子たちが騒ぎ始めた。

「お前…あいつのこと知ってんの?」「誰あいつ…」「俺も知らねー」



「…別に。知らねーけど。」



「…っ…そっ…そうだよなっ…!!わりーわりー…」

「…あっ!!んでさ~さっきの話なんだけど…!!」






『・・・。』

私はあまりの恥ずかしさにずっと下を向いていた。

正面すら向けない。

ただ俯いていた。

(絶対…私の事…)

私のばかやろー…













「・・・。」





 つづく