黒牢城(こくろうじょう)
米沢穂信 KADOKAWA 2021
(あらすじ)
織田信長に対して謀反をおこした荒木村重は有岡城に籠城する。
説得に訪れた使者、黒田官兵衛を捕らえ土牢につないだことで、いよいよ有岡城は孤立してしまう。
やがて、密室状態の城内で、少年の謎の死をはじめ4つの不可解な事件が起きる。
犯人は家臣なのか、身内なのか、それとも第三者なのか?
動揺する村重は、軍師官兵衛に事件のなぞ解きを依頼する。
(感想)
本書は、今村省吾さんの「塞王の盾」と共に2021年度下半期の直木賞を受賞した作品です。
実は、「塞王の盾」をはじめに読み始めたのですが、500ページを超える大作の上、退院後の体調不良の時期と重なって、のこり100Pが読めませんでした。
そこで、先に「黒牢城」を読み始めたところ、歴史小説風のミステリーということで、あっという間に面白く読み終えてしまいました。
この小説の主人公、荒木村重は、(「塞王の盾」にも言及があるのですが)堅牢な城で籠城したのち妻や配下の武将、領民を残して自らは遁走してしまった不可解な人物。城は落ち、領民は殺され、武将や妻は処刑されますが、彼だけは生き延びます。
ミステリー作品として面白いのはもちろん、彼が何故武士らしからぬ行動をしたのか、その答えがこの小説に描かれていたように思えました。
村重は元々有岡城のある摂津国に縁がある訳でもなく、妻だしの方のように信仰の篤い人でもない。閉塞感漂う籠城の中で最も疲弊したのは彼なのではないか、(フィクションではありますが)最後に復讐という罠に落ちたのも分かるような気がしました。
大河ドラマ「豊臣兄弟」にも村重とその妻が登場するようです。
映画「黒牢城」は6月19日公開。
「光る君へ」に出演した吉高由里子、柄本佑、ユースケ・サンタマリアさんもこの映画に出演しています。