認知神経科学18
動機づけ1
動機づけとは何か

今回から動機づけについて説明します。
今回は、動機づけとは何かについてお話しします。

人間も動物も、それは動く存在です。
即ち、それは行動をする存在です。
行動にはさまざまなものがありますが、
例えば、お腹がすいてご飯を食べること、
喉が渇いて水分をとること、
これらは生きるために重要な行動です。

行動には、必ず意味・理由があります。
心理学において、
意味のない行動はありません。
すべての行動には、
その行動を起こす原因、
つまり理由があると考えます。

なぜその行動をしたのか。
行動は必ず動機を必要とします。

だから人間は、
何らかの理由があって行動をし、
また行動を維持し、
そして行動をやめます。

このような、行動を開始・維持・停止させる
プロセスを総称して動機づけmotivationと言います。
動機づけによって、
行動が始まり、維持され、終わるのです。

動機づけは、主に、
動因driveと誘因incentiveの関係で考えられます。

動因とは、自分の内側にある
行動を生じさせる要因、
誘因とは、自分の外側にある
行動を生じさせる要因です。

この2つが相互作用して、
行動があらわれます。

つまり、動因と誘因は2つでセットです。
例えば、お腹がすいているのは動因になります。
動因は、自分の内側にある原因だからです。
しかし、それだけでは行動は起こりません。
自分の外側にその動因を行動へ向かわせる因子、
即ち、誘因がなければなりません。
この場合、自分の外側に食べ物があるということが
お腹がすいているという動因に対する誘因です。
お腹がすいている+食べ物がある、
この2つによって、
食べ物を食べるという行動が起こります。

行動はこのように、
自分の内側に湧き起こる動因と
それを誘発したり、それを補う誘因の
2つの因子によって起こされます。

だから、お腹もすいていないときに
食べ物がたくさんあっても
食べないわけですし、
また、お腹がすいていても、
誘因である食べ物がなければ食べられないのです。

また動因は誘因を引き起こすし、
同じように誘因は動因を引き起します。
例えば、暑いという状態にあるからこそ、
冷たい水が誘因になります。
これが例えば寒いという状態だったら、
冷たい水は誰も欲さないわけです。
また後者の場合だと、例えば、
すごくおいしそうな食べ物や
おいしそうな匂いがすると、
食べたいという動因が沸き起こる例がそれです。

ではもう少し動因について説明します。

動因にも、生得的なものと
後天的なものとがあります。

生得的な動因を、生理的動因と言い、
空腹、口渇、性欲、排せつなどがあります。
これらは、生まれながら持っている動因です。

それに対して、後天的な動因を、
社会的動因と言い、
名誉欲や知識欲などがあります。
これらは、生まれてから、
経験によって獲得される動因です。

今回は、動因と誘因について説明し、
動機づけとは何かについてお話ししました。
何かをしたいという動因は、
外側の環境に存在する誘因との関係によって
行動化されるかどうかが決まります。
動機づけは、この2つの因子の
両方によって決まるものです。

では次回は、
動機づけの分類と、
その分類それぞれの大まかな特徴について説明します。