脳神経科学17
学習2
条件づけの心理メカニズム
今日は、ヒトがもつ学習形態のうち、
条件づけの心理メカニズムについて、
古典的条件づけとオペラント条件づけについてお話しします。
古典的条件づけclassical conditioningとは、
パヴロフ条件づけやレスポンデント条件づけとも言われ、
生得的に持っている反射が経験によって変化することです。
これは、イワン・パヴロフ(1849-1936)という
ロシアの生理学者によって発見されたもの(条件反射実験,1902)です。
彼は、もともとイヌに手術を行って、
消化腺の機能を調べる研究をしていましたが、
その中で、毎日エサをやりにくる飼育員の足音を
きいただけで、唾液分泌をしていることを発見しました。
A→B ○
C→B ×
A+C→B
C→B ○
通常、生得的に、Aという刺激によってBという反応が起こります。
このとき、AをUS(unconditioned stimulus)、
BをUR(unconditioned response)と言います。
USによってURが起こることを、反射reflexと言います。
例えば、食べ物を口に入れると、唾液が出ることです。
そのとき、食べ物を口に入れると同時に、音Cを聞かせます。
通常は、この音によって唾液は出ません。
この刺激を、NS(neutral stimulus)と言います。
しかしながら、USとNSを対提示することによって、
NSによってURが起こるようになります。
つまり、音を聞かせるだけで唾液が出るようになります。
こうなると、条件づけが完成したと言い、
音刺激をCS(conditioned stimulus)、
唾液分泌をCR(conditioned response)と言い、
CSによってCRが起こることを、
条件反射conditioned reflexと言います。
このようにして、生得的に持っていた反射が、
経験によって、変化することを古典的条件づけと言います。
例えば、日本人がうめぼしを見ただけで唾液を出すことや
以前滑った道路を通っただけで恐怖を感じること、
あるいは、悲しいときに聴いた音楽を聴いただけで悲しくなること、
このようなこともすべて古典的条件によるものです。
次に、オペラント条件づけについて説明します。
オペラント条件づけoperant conditioningとは、
生得的には持っていない行動を経験によって獲得することです。
例えば、通常イルカはショーをしたり、
サルがお茶を持ってきたりはしませんが、
あることをすることによって、それらの行動をするようになります。
それが、オペラント条件づけです。
オペラント条件づけの原理となるのが、
効果の法則law of effectです。
要するに、その動物にとって、
快をもたらす反応は、強められ、
不快をもたらす反応は、弱められるということです。
弁別刺激→反応→結果
結果が反応を強化
ある刺激に対してある反応をしたときに、
快をもたらす結果が得られると、その反応は強められ、
ある刺激に対してある反応をしたときに、
不快をもたらす結果が得られると、その反応は弱められます。
例えば、レバーを押したときに、
エサがもらえたら、レバー押し行動は増えます。
しかし、レバーを押したときに、
電流が流れたら、レバー押し行動は抑制されます。
このように、その動物にとって、
快をもたらすのかどうかによって、
その行動を増やしたり減らしたりします。
その行動を、オペラント行動と言います。
オペラント行動とは、
目的を達成するための手段としての行動です。
今日は、条件づけの心理メカニズムについてお話ししました。
これらの連合的学習は、物事の関連性、
つまり刺激と反応の関係の強度と意味について学習するものです。
明日は、これらの学習を支える神経基盤についてお話しします。