脳神経科学8
感覚知覚系
味覚
味覚と嗅覚は、どちらも化学感覚系に属します。
化学感覚系とは、化学情報に対する感覚系です。
味覚は、水溶性化学物質が適刺激のために接触感覚、
嗅覚は、揮発性化学物質が適刺激のために遠隔感覚と言います。
これらの化学感覚系は、進化的に古い感覚系です。
今日からは、味覚についてお話しします。
味覚には、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味の
計5つの基本味があるとされます。
これらはそれぞれ別のメカニズムで受容されます。
味覚の受容器は舌などの乳頭にある味蕾です。
味蕾は成人でだいたい9000個あると言われます。
乳頭の50%は、舌の上にあり、
残りの50%は、頬部や咽頭、喉頭、食道粘膜などにあります。
したがって、味は、舌だけではなく、
このような部位でも感知していることになります。
乳頭には、茸状乳頭、葉状乳頭、
有郭乳頭、糸状乳頭の4種類があります。
味を感知できるのは糸状以外の3つです。
茸状乳頭は舌の前3分の2にあります。
全体の30%を占めます。
葉状乳頭と有郭乳頭は、残りの70%を占め、
葉状は、舌の側面の後ろ3分の1にあり、
有郭は、舌の後方にV字型をして存在します。
これらの乳頭の中に、こまごまと味蕾があります。
では、味蕾を拡大してみましょう。
味蕾の中には、味細胞と支持細胞と基底細胞があります。
味覚の受容器は、正確に言えば味蕾の味細胞です。
味細胞は、先端部分に味覚物質に反応する受容器があります。
その受容器を、味毛と言います。
そこで刺激を受けて、細胞を脱分極させ、
味覚神経に興奮性の情報を伝えます。
味細胞から味覚神経へはシナプスを介して情報伝達されます。
そのシナプス伝達には、当然、神経伝達物質が使われます。
甘味・苦味・旨味は、伝達物質としてATPが使われ、
シナプス後のATP受容体に結合して電位変化が起こります。
酸味は、セロトニンが使われると言われています。
塩味は、まだわかってません。
そのようにして味細胞で受けた刺激を
神経信号として脳へと伝えます。
では、味覚情報はどのような経路で脳へ伝えられるのでしょうか。
舌の前3分の2にある茸状乳頭からは鼓索神経が、
舌の後3分の1にある葉状・有郭乳頭からは舌咽神経が、
咽頭などの舌以外の部位からは迷走神経が出ています。
それらの神経は、延髄孤束核に投射され、
そこから視床の後内側腹側核(VPM)を中継点とし、
大脳皮質の第1次味覚野および島皮質へ投射されます。
第1次味覚野は、側頭葉の内側、体性感覚野の近くにあります。
ここでは味の質や強さが識別されているとされています。
さらに島皮質への投射で、味覚感が生じることから
ここは味覚に関わっていると考えられていますが、
はっきりとはわかっていません。
これらの1次的な処理がなされたのち、
次は第2次味覚野へ情報が送られます。
第2次味覚野は、前頭前野の眼窩前頭皮質です。
ここではほかの感覚要素などと統合され、
総合的なおいしさを判断していると考えられます。
明日は味細胞で味覚物質を受容してのち、
どのように神経信号へ変換するのかということの説明をします。