脳神経科学2
ニューロンとグリア1
今回は、ニューロンの構造と機能について、
細胞体を中心に説明します。
体の組織や器官を構成しているのはもっぱら細胞です。
ニューロンもその細胞の1つです。
他の細胞と違うのは、
細胞同士が神経突起によって複雑な回路網をつくっている点です。
ニューロンはヒトの脳に約1000億個存在し、
全身にさまざまな情報を伝達しています。
そのニューロンを支える役割をしているのがグリアです。
ここでは、主にニューロンについてお話ししたいと思います。
ニューロンneuronは、
細胞体cell body、樹状突起dendrite、軸索axonで構成されます。
これら全体はニューロン膜(細胞膜)という
約50nmの膜で覆われています。
ニューロン膜は信号伝播において非常に重要な役割を持ちます。
そのことについては次のトピックで述べます。
細胞体はニューロンの中心であり核を含みます。
ここでタンパク質の合成や代謝制御を行います。
その細胞体から伸びているのが樹状突起と軸索です。
樹状突起は、細胞体への入力装置であり、
軸索は細胞体からの出力装置です。
今日はその中から細胞体の構造と機能について取り上げます。
細胞体は細胞質ゾルと細胞小器官から構成されます。
細胞質ゾルというのは、
塩を含んだカリウムを多くもつ溶液で、細胞内を満たしています。
細胞小器官は、核、粗面小胞体、滑面小胞体、
ゴルジ装置、ミトコンドリアからなります。
そのうち核と細胞質ゾル以外の構造物を細胞質cytoplasmと言います。
核は、細胞体の中央にある球状の構造物です。
核には複数の染色体があり、
その中にデオキシリボ核酸=DNAが含まれます。
それを構成しているのが遺伝子geneです。
DNAの読み取りを遺伝子発現と言いますが、
その機序について説明します。
DNAは転写されmRNAとなり、
それが翻訳されてタンパク質が合成されます。
タンパク質の特性がニューロンの特性であるとも言えます。
DNAはそのままでは核の外に出ることができませんので、
核の外つまり細胞質まで出るために転写がなされます。
ではどのようにしてDNAは転写産物である
メッセンジャーRNA(mRNA)に転写されるのでしょう。
遺伝子にははじまりを示すプロモータと終わりを示す
ターミネータという特殊な塩基配列があり、
そこにRNA合成酵素が結合することで
転写がはじまり、また転写が終わります。
その二つにはさまれて、
エクソンという部分とイントロンという部分があります。
転写されて、RNAとなると、
その先スプライシングがなされて、
イントロンが除去が除去されたかたちになります。
すなわちこれがmRNAです。
これによって核の外に出ることができたDNA情報は、
いろんな場所にあるタンパク質合成部位へ移動し、翻訳作業に入ります。
翻訳というのは、アミノ酸がmRNAの指令のもとで合成されることです。
タンパク質合成の主要な場所となるのが、粗面小胞体です。
その表面にはリボソームというものが点在していて、
mRNAはそのリボソームに巻き付き、
mRNAの指令のとおりにタンパク質を合成します。
また、自由に浮遊している自由リボソームも
同じようにタンパク質を合成します。
粗面小胞体での合成後は細胞膜
あるいは細胞小器官に組み込まれます。
自由リボソームでの合成後は細胞質に存在します。
ゴルジ装置では、翻訳されたタンパク質が処理され、
軸索などから他の場所へ運べるように仕分けを行う場所です。
ミトコンドリアは、細胞呼吸を行うものです。
ピルビン酸と酸素を取り込んで、ADPにリン酸を付加し、
ATPをつくります。これが細胞のエネルギー源になります。
次回は、軸索と樹状突起についてです。