【小説】好機と思っていたが、結果だけがある(閣下の章 14) | 箱庭の空

箱庭の空

小さな世界。

 そういう様子がとても……可愛らしい。いや別に何も、やましい感情ではない。ただすべすべした肌とぽってりぷっくりした頬。表情からして、嘘がなく素直。今も心底困っている風で、一方で、仄かに笑んでいる。

 人間の情緒というものは、このように混乱しているのだ。もしくは、未分化で……。

 あの日、自分達があの孤立した空域に誘い込まれたのも、司令部のせいといえばそうで、上が作り出した状況だったのだ。好機と思っていたが、そうとも限らなくて結果だけがある。


「でも、それでも何だかだめな時があって」


 人形とオルゴールを見比べながら首を傾げ、彼女は、中が空であることを繰り返し確かめている。


「前に言っていたことと、違っているなって思うことがあるんですよ。だから、前にこういう話になっていたと思いますけど、とか、言うと、時々険悪な雰囲気になるんです……」


 納得がいかないのだと、しかめた眉が主張しながら。


「どうしてなんだろう……何も悪いことは言っていないと思うんですけど……そこでの流れに反しているわけではないし、みんなが言ったこと、決まったことに逆らってなんかいないはずだし……」


 話を聞きながら、アリオールは別なことも考えている。ひた向きになってしまっているなら、茶葉を選ぶ余裕もなかろう。それなら、こちらでちょうどいいものを見立てて用意してやるか、と。

 これは趣味。冗談めかして調合と言うこともあるけれど、大した効果が出るようなものではない。お気持ち程度。医薬品でもない。食に適さないものが原材料でもない。要するに一片の怪しさもない。