歴史を変えたい | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

歴史を変えたい

自分がやりたいことは、なんだろうか?

これ、ふつうは、就職活動のときに必死で考えることだと思う。
僕の場合は、ずっとベンチャーがやりたかったからか、あまり悩んだ記憶がない。

むしろ、就職活動から数年たった最近、悩むようになった。
戦略コンサルを経て、起業した会社、オンライン英会話レアジョブ。
順調に成長し、いまは正社員が70人、講師が2000人。
夢中で走ってから気がつけば、自分がやりたかったベンチャーを今やれている。

で、自分がこれからやりたいことは、なんだろうか?

やりたかったことをやれている今だからこそ、この問いが再びやってきた。



自分がやりたいことが何なのか。

これは、もはや僕一人の問題ではない。
僕の会社全体の問題になっている。

・僕は、自分のうみだしたこの会社を、どのような会社にしたいのか?
・その実現には、もう少ししばらく経営者として頑張っていったほうがよいのか?
・それとも、近い将来、経営者の座を誰かに譲って、僕は別の生き方を選ぶという可能性はあるのか?

しっかり考えないと、僕だけじゃない、会社全体に被害が及ぶ。
だから、会社からお休みをもらってじっくり考えることにした。
3日お休みをもらい、僕がフィリピンで一番好きな場所、バレールに一人で行った。
バレールはマニラからバスで9時間のサーフィンスポット。
3日間プカプカと海に浮きながら、自分が何をしたいのか考えた。
会社の2,3年後ではなく、会社の10年後、20年後を考えた。
でっかい虹を眺めながら、波がおだやかな水平線を眺めながら、
ぼんやりと考えた。

戦略コンサル辞めて起業している日記-110907Baler


結局バレールにいるあいだは、何の答えも出なかった。
しょうがないから、3日目に帰ることにした。
マニラへ帰るために、シエラマドレ山地をくねくねと数時間かけて抜ける乗り合いバンに乗った。

山々は、ちょうど乾季が終わって雨季に入ったところだった。
考えるともなしに、景色をぼんやりと見ていたら、僕の背筋に軽い電流が走った。
帰り道で、ようやく気づいた。
高校生のときからずっと、歴史を変えたいと思っていたのだと。



中学や高校で、落合信彦の本をむさぼるように読んだ。
「ただ栄光のためでなく」
「狼たちへの伝言」
「アメリカよ、あめりかよ」
はまった本は何冊かあるけれど、
そのなかで「王たちの行進 」に出てくる主人公の生き方に心引かれた。

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1990年代にソ連が崩壊し、冷戦が終わった。
ソ連崩壊をもたらしたのは、東欧諸国の相次ぐ民主化。
民主化をもたらしたのは、ベルリンの壁の崩壊。
ベルリンの壁が壊れたのは、東ドイツ人が実質的に自由に西ドイツに行くルートがあったから。
東ドイツからチェコスロバキア、そしてオーストリアを経て、西ドイツへと抜ける道。
この道を開拓したのは、とある日本人ビジネスマンだった。
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これが、「王たちの行進」のストーリー。
落合信彦の小説だから、史実ではなくエンターテイメントではあるんだけれども、
高校生の僕はすごく興奮した。

僕も歴史を変えたい!

強く思った。
でも、周りの誰にも言わなかった。
言うと、笑われる。
なんの力も実績もない僕は、すごく恥ずかしくて、黙ることを選んだ。
高校生のあいだは黙っていた。
大学一年生の冬にベンチャーに入り、ベンチャーという働き方に恋した。
それからは、いかにベンチャーをやるかの一心で、高校生のときの気持ちを忘れてしまっていた。



戦略コンサル辞めて起業している日記-110907Baler2

そういう高校生のときの気持ちを、フィリピンの山々をみながら僕が思い出した。

歴史を変えたい。
日本人1000万人を英語が話せるようにし
世界中で和僑として活躍する、その後押しがしたい。
フィリピン人をはじめとする、埋もれている才能を、
世界で発掘し、活かしきりたい。

歴史を変えたいって、もう僕は口に出してもいいんだ。
「無理」と笑う人は、まだいっぱいいるだろう。
でも、僕を応援してくれる人も、今はいっぱいいる。

そう思って、涙が出てきた。



多くの起業家は、時価総額で数千億円めざしますとか、数値目標を掲げる。
それもいいと思うが、僕には似合わない。
かといって、ビジネスから離れるのも、僕には似合わない。

facebookはジャスミン革命を起こし、中東で連鎖的に政府が転覆した。
ある程度の規模、別の言い方をすると利益額がないと、歴史を変えるインパクトは起こせない。
でも利益額だけが大切なわけじゃない。
社会のどんな役に立つのかとか、どういう意志を持った仲間がいるかも大事だ。

歴史を変えることと、ビジネスの両立。
そんな、狭い道を突き進みたいと思う。