「自分はモレなく意見を聞けているのか?」という感覚 | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

「自分はモレなく意見を聞けているのか?」という感覚

日本側に、フルタイムスタッフが2人はいった。
なので、さっそく問題解決トレーニングを行った。
今回は、日本側でもきちんと1週間かけて行った

トレーニングは金曜日に無事終わり、受けた人から次のような感想をもらった。

・人事タスクのデレゲーションには、ポリシー明確化が効くと思ていたが、専任スタッフを置くことの方が効くのだと見えてきたのは、収穫だった
・アルバイトの待遇向上は、時給が効く思っていたが、シフトの入れ方がより重要だとわかった
・講師やフィリピンスタッフに意見を聞いてみたら、日本側だけでは考えてもみなかった理由が見えてきた

特に最後の、
「(いつもは意見を聞かない人に)意見を聞いてみたら、考えてもみなかった理由が見えてきた」
この感覚が重要だと考えている。

そももそも、問題解決プロセスは、次のプロセスで成り立っている。

1) 仮説を立てる
2) 仮説を元に、インタビューや調査を行う (*)
3) そこで得られた知見をロジックツリーにまとめる
4) それをもとにして、イシューツリーをつくる
5) それをもとにして、打ち手の優先順位を決める

これまで50人近くをトレーニングしてきた。
うまくいく人、苦しむ人などたくさん見るなか、わかったのは、
結果を最も左右しているのは 2) のプロセス、インタビューの部分だった。

より正確に言うと、
インタビューをどう進めるかのスキルでもなく
インタビューの質問リストづくりでもなく
「誰に聞くか?」という、質問対象者リストづくりが最も結果を左右していた。

ちなみに、一番難しいプロセスは 3)の、得られた知見をロジックツリーにまとめる部分。
ものごとを論理的に切り分けるのは、理系の人は結構得意だが、文系の人ほど苦労する。
だが、一番難しい、イコール、一番結果を左右する、ではない。

どういうことかというと、一見困難なときは、実は困難じゃないからだ。
例えば登山では、明らかに危険だと言う場所ではみんなの注意力が高まる。
だから、実はそれほど危険でない。
むしろ、一見危険でないところで人は死ぬ。

同様に、明らかに難しいと言う場合は、人はいつも以上に頑張ったり、助けを求めたりする。
だから、明らかに難しい=実はそれほど難しくはない、ということになる。

というわけで、一番難しい 3)のプロセス、ロジックツリーづくりは、あまり結果を左右しない。
みんな、僕とかにヘルプを頼む。 だから、一応形はなんとかつく。
むしろ結果を左右するのは、一見難しくない 2) 「誰に聞くか?」リストづくりだ。

「誰に聞くか?」は一見簡単そうに見える。
それに、不十分なリストをつくっても、「何かおかしいな?」という感覚を持ちづらい。
だから、多くの人が、インタビュー対象者にモレが出る。

イシューが「xxxという問題を解決できるか?」のとき、インタビュー対象者は最低4タイプ。
a) 問題を抱えたことがない人 (以前も今も問題はない)
b) 問題を抱えていた人 (以前は問題あったが、今は大丈夫)
c) 問題を抱えるようになった人 (以前は問題なかったが、今は問題)
d) 問題を抱え続けている人 (以前も今も問題がある)

よく犯しがちな間違いは、いちばん答えてもらいやすいa)やb)の人ばかりに意見を聞くことだ。
c)やd)の人からは、そもそもインタビューのOKをもらいづらく、口も重い。
だからついついインタビュー対象者からモレてしまう。
でも、いちばん重要な情報を持っているのは、往々にしてこのタイプの人たち。
現在解決できていない問題については、現在解決できていない人に聞くのが一番なのだ!

だからこそ、
「(いつもは意見を聞かない人に)意見を聞いてみたら、考えてもみなかった理由が見えてきた」
この感覚が重要だと思っている。

ロジカルに整理するスキルや、きれいなプレゼン資料をつくるスキルは、
身に着けるのに時間がかかる割には、ビジネスに直接役立ちづらい。

でも、「自分はモレなく意見を聞けているのか?」
この疑問を持ち続けることは比較的容易だし、ビジネスにメチャメチャよく効く。

入社直後のこの問題解決トレーニングが、この疑問を持ち続けるきっかけとなったらうれしい。