"Mr.", "Ms.", "Sir" nor "Ma'am." | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

"Mr.", "Ms.", "Sir" nor "Ma'am."

フィリピンに初めて来たときに違和感を感じたのが、
「Sir」と呼びかけられること。

前に働いていたのは米系の会社だが、
「Sir」なんて言葉、社内で聞いたこともなかった。
1年くらい海外を旅行していた時も、バックパっカーだったからかもだが、
聞いたことはほとんどなかった。

でもこっちにくると、タクシーでも、ホテルでも、
ひんぱんに「Sir」「Sir」と呼びかけられる。
たぶん、植民地時代に、欧米人に「Sir」「Sir」を言い慣れていて、
上下関係が比較的厳しいフィリピン人の中に、
それが正しい英語の姿として、現在に引き継がれて来たのだと思う。

ただ、僕には違和感があって、「俺は別にSirじゃないし」と常々感じていた。

でも、講師からもひんぱんに「Sir」「Sir」といわれる。
「Sirと呼ばないでほしい」
「KatoまたはKato-sanと呼んでほしい」
と毎回言っていたのだけれど、
講師が増えてくるにつれ、同じことを何回も言い続けるのに飽きて、
そのままにしていた。

だから、社内でもスタッフからときどき「Sir」と呼ばれはじめていたのだが、
面倒くさいのでそのままにしていた。

だが、ちょっと状況が変わった。

先日、ミドルマネジメントとしてスタッフを何人か選抜した。
で、ミドルマネジメントとして選抜されたとたん、
そのスタッフたちは「Ma'am」という敬称づきで呼びかけられ始めた。

もちろん、「Sir」「Ma'am」などをつけるスタッフは、敬意を表するためにそうしている。
でも、呼びかけられるスタッフには、こう聞こえてしまっていた。
「私はあなたから距離を置きます。だからあなたとは仲良くなれません」

あまり年も変わらない者同士だから、けっこうショックだった模様。
で、ミドルマネジメントに選ばれたこと自体のプレッシャーも伴って、
「ミドルマネジメントは嫌だ、一番下に戻してほしい」
と言い出してしまっていた。

だから、先日、こちらでミーティングをやり、
少なくともスタッフの間では、
"Sir", "Ma'am.", "Mr.", "Ms." と敬称をつけて呼びかけるのを廃止しよう、
ということにした。



そういえば前職の外資コンサルでも、
日本人同士の呼び方を、目上・目下・年上・年下にかかわらず、
「~さん」に統一しましょう、
という決まりがあった。

1期下の後輩たちを「~君」と呼ぶのに慣れていた僕は、
「変なことを言うなぁ」くらいに思っていたのだが、
今から思えばあれは重要なこと。

呼びかけが行われるたびに、関係性が意識・強化され、
関係性が強く意識されればされるほど、
組織間のGapは広がり、目上の人に正直に自分の意見を言いにくい。

一番生の情報に当っているアソシエイトクラスが、上に意見を言えなければ、
大きく方向性がずれていく恐れが大いにある。

だから、目上・目下・年上・年下にかかわらず、「~さん」に統一するのは、
コンサルとしての生産性に大きく影響するのだと思う。



最近、言霊ではないが、名称や呼びかけ方の持つ威力にけっこう興味がある。
何と呼ばれるかは、その存在に大きな影響を与えるのだと思う。