作業に熱中するのは良くないかどうか | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

作業に熱中するのは良くないかどうか

コンサルでは、一つの作業に熱中するのは良くない、と教えられる。

全ての作業はイシューに基づいて行われるものだから、
熱中してしまう、というのは、全体像を理解していないってこと。
一部が過剰品質になっても、多くの場合、プロジェクト全体の価値向上に貢献しない。
だから、目的を押え、バランス良く、要領よく作業をこなしなさい。

そう教えられる。



確かにコンサルではそうなんだけれど、
起業してからの2年間でわかったのは、
経営者、とくに起業家では、違うってこと。

全体のバランスを忘れて、一つの作業に熱中してしまう気質は、
コンサルとしては適性のなさを表す指標のひとつなのかもしれないけれど、
経営者としては、むしろ適性があることを表す指標のひとつ何だと思う。

なんでかというと、「思い」が大事だから。

経営者の仕事は、きれいな絵を描くことじゃなくて、人を動かすこと。
描く絵なんて、10人前でいい。
だいじなのは、描いた絵を実現できるかどうか。
つまり、人々の気持ちを、絵の実現に向けて動かせるかどうか。

では、どうやって人々の気持ちを動かすか。
僕は、それは、自分自身の「思い」が一番だと思う。
他の人を本気にさせるのは、自分の本気だけだ。
要領よく人を本気にさせる方法なんて、そんなの、相手に失礼じゃないか。

全体のバランスがとれているものからは、人々は、何も感じない。
うまいね、しっかりしている、安心できる、 くらいの感想が関の山。

むしろ、大事なのは、過剰品質。
「なんで、こんなところに、こんなにこだわっているの?」 という意味のわからなさが、
「この人は、何をしたい人なんだろう?」 という疑問をうみだす。

その人をより深く理解しようとする好奇心を生み出し、
その人を深く理解すればするほど、
その人に影響され、動かされていく。

・製品の見た目に興味のないスティーブ・ジョブズ。
・技術にこだわりのない本田宗一郎。
・世の中をアルゴリズムで片付けようとしないGoogleのS・ブリン&L・ペイジ

そういう経営者たちに、人々は、心動かされるのだろうか。

人々を馬鹿にしてはいけない。
強い思いでしか、他の人の思いは動かせない。
だから、作業に熱中してしまう性質は、
コンサルにとっては悪でも、
起業家に向いている、そういう素質だと思う。