業務を早くこなす方法
職人気質で、いいものはつくる反面、仕事が遅いスタッフがいる。
そのスタッフに伝えた話。
(まず、例の問題解決のやり方で、そのスタッフがなぜ作業が遅いのかを探った。
すると、一番大きな原因は次のようなものだった。
・作業そのものが遅いわけではないが、
やる必要のない作業を多数やっているために、
全体として時間がかかってしまっている。
・やる必要のない作業を多数やってしまっているのは、
作業の最初の段階で、最終成果物の形が見えていないから。 )
ではどうすればよいか、ということを次のように伝えた。
Blank output (または、トップダウンアプローチ)
1) まずは、紙と鉛筆を用意して、全ての作業の最初に、
最終成果物の空欄バージョンをつくる。
2) あくまでも空欄バージョンなので、実際の文章やグラフや絵などは一切空欄にする。
「何をどこにどれくらいの分量で、最終成果物に載せるのか」を示す四角(=空欄)が
必然的に詰め込まれたものになる。
3) 欄がたくさんできたら、次に、その空欄を埋めるために必要な作業時間を
「(30 min)」などのような形で小さく書き込んでいく。
4) 作業時間を書き込み終わったら、すべての空欄の作業時間を合計してみる。
その合計作業時間が、その最終成果物をつくるのに見合うものなのかを判断する。
時間がかかりすぎるようなら、あまり重要でない割には時間がかかる空欄を探し、削除する。
5) 納得できる合計作業時間になったら、作業開始だが、この段階で成果物の利用者(上司や講師、生徒様など)に見せて簡単に意見を聞くのも望ましい。5分間のインタビューで、1時間以上かかる作業が実は不要だったと気づいた、というのはよくある話。
6) いったん作業を開始したら、(30 min)と書いた時間は絶対に守る。 それ以上時間がかかるようであったら、いったん放棄する。そこは空欄のままにして、追加で必要な作業時間を書き込んで、次の空欄に移る。 この方法で、すべての空欄に手をつけ終えるまで繰り返す。
7) すべての空欄に手をつけ終えると、「ある程度作業が進行したが、まだ空欄が残っている最終成果物」ができあがる。そうしたら、また4)~6)を繰り返す。空欄を埋めたり、成果物の利用者の話を聞いて残った空欄を削除したりしながら、空欄を埋め尽くす。
8) 空欄を埋め尽くすと、最終成果物のできあがり!
なぜこの方法がいいかというと、理由は下記のとおり。
・必要のない作業をやっているのは、作業を積み上げて成果物に持って行こうとするから。
積み上げながら考えているので、作業の重複や、不要な作業や、
いったりきたり、ということが生じてしまっている。
(ボトムアップアプローチ)
・最終成果物の形がきまっていると、作業を引き算で設計できる。
最終成果物の姿に直結する作業以外は、もう入ってくる余地がうすい。
(トップダウンアプローチ)
・ボトムアップが間違っていて、トップダウンが正しいわけではない。使い分けが大切。時間が無駄にかかっていると思うなら、トップダウンの方が良い。
・この方法だと、数十分単位で締め切りが来るので、自分がどれだけ予定よりも遅れているのか、一目瞭然。時間に対する意識が高まるので、作業の対時間効率が大幅に高まる。
・この方法は、最終成果物がなんだろうが有効。ワードでも、エクセルでも、
パワーポイントでも、HTMLでも、一本のメールでも構わない。
・あなたの職人気質、クオリティを少しでも高めたいという気持ちは、捨てる必要はない。その気持ちを持ち続けたまま、時間を短縮するのは可能。
・あなたは今、成果物をゼロからすべてつくっている。だが、今後あなたが昇進していくと、大枠を決めるのがあなたの仕事になる。空欄を埋める作業自体はあなたの部下がやることになる。だから、適切な空欄の設計こそがあなたの仕事になっていく
