成長の痛み | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

成長の痛み

おかげさまで、2008年に、レアジョブは急成長した。
そして、講師を増やしていく中で感じていたのは、
成長とは痛みを伴うということだった。

例えば、講師5人を前提にしていたシステムでは、
講師100人はカバーしきれない。
  ・どの講師がどの生徒様とやっているか、把握しきれなくなる
  ・講師5人に給料を支払うには、単純に送金して手渡しすればいいが、
   100人になるときちんとしたルートを考えないと、
   送金すらできない
   (=個人的な送金の枠から、マネーロンダリングの監視対象の枠になる)

だから、例えば講師が100人になった段階では、
社内が混乱し、時には講師や生徒様に迷惑をおかけすることがあった。

大体今までの感覚から言うと、講師の数が倍になると、
次元の違う痛みが発生し、
その問題に対処する必要が生じてくる、とわかった。

そうなると、
「現在の成長ペースで行くと、
 だいたいあと○週間/○か月くらいしたら、
 ○○の問題が生じるから、
 早めに手を打つことにしよう」
ということがわかる。

こういうことで参考になる本はこれ。

アントレプレナーマネジメント・ブック―MBAで教える成長の戦略的マネジメント

戦略コンサル辞めて起業している日記-Growing_Pains



「アントレプレナーマネジメント・ブック」という題名よりも、
原題の「Growing Pain」という題名の方がしっくりくる。

とにかく、数あるベンチャー本の中で、
最も参考になった本を5冊を上げるとすれば、
間違いなくその中に入る。
でも、今は残念ながら絶版のよう。

内容をかいつまんで言うと、ベンチャーは4つの段階に分かれる。

1) 創業者だけの段階(または、売上高0円の段階)
2) 従業員10人程度の段階(または、売上高1億円の段階)
3) 従業員30人程度の段階(または、売上高10億円の段階)
4) 従業員100人以上の段階(または、売上高100億円の段階)

で、それぞれの段階では、最も大切なのは異なる。

1) 売れる商品・サービスをつくりだすこと
2) 必要な人材を採用・トレーニングする仕組みをつくること
3) 社内の経営管理体制をつくること
4) 企業文化をマネジメントすること

例えば、マッキンゼー出身で、DeNAを創業した南場さんが、こういう記事 を書いている

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前職コンサルタントだった私は、ビッダーズが15分に一回ダウンするほど脆弱なシステムだったサービス開始直後からどうしても分析がしたかったらしく、すべてに優先して(経路別入会者数などキー数値がわかる)コックピットを完備した。

阿呆である。

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これがなぜ「阿呆」なのかというと、
サービスとしてまだ1)の段階なのに、
3)で必要なことをしているからだ。

ただ、逆の言い方をすると、
3)の段階にくると、こういう経営管理システムは必要になってくる。

いや、なくても事業はやっていけるんだけれど、
・施策間の優先順位がわからないまま、事業を運営していかなければいけない
・施策の評価ができないため、各従業員の評価ができず、社内のモチベーションが低下する
という、「成長の痛み」を感じることになる。

レアジョブは、1)から2)の移行期にある。
思ったより、2)で生じるはずの問題は回避できてきたのではないか、
と思っている。

2)から3)で必要な対策も、今からきちんと考えておきたいと思う。