組織のあり方を考えている | フィリピンで働くシリアル・アントレプレナーの日記

組織のあり方を考えている

フィリピンに到着した。
成田空港に向かう電車から、空港、飛行機の上と、ずっと仕事をしていた。
このフィリピンに向かう時間は、電話とか、気を散らせる娯楽とか、一切の邪魔が入らないまま仕事に集中できるので、この時間はけっこう大好き。

さて、今日はずっとうちの組織図を考えていたが、
組織図を考え抜くと、どのようなトレーニングを施すか、という話につながってきたので、面白かった。

・組織図は、誰をどのポジションに据えるかが大事
・ゆえに、各ポジションにおけるスキル要件を明確にする必要がある
・ゆえに、社内で必要なスキルと、その習得順序を明確にする必要がある
・ゆえに、そのスキルをOJT以外で(つまり座学のトレーニングの場で)で習得してもらうとすると、きちんとしたトレーニングプランが必要になる

どうしようかいろいろ考えて、基本的には、コンサル時代の制度を真似てみようと思った。

戦略コンサルのときの人事制度は、下記のようなものだった

・コンサルタントは数か月程度のプロジェクトに割り当てられ、業務は基本的にそのプロジェクト単位で行う
・「マネージャー」「アソシエイト」などポジションがあり、どのプロジェクトに所属してもその中での役割期待・権限は一緒である。(例:マネージャーはプロジェクト全体をマネージすること、など)
・どのポジションにつけるかは、持っているスキルによって決まる。
・スキルセットは、すべての従業員に対して等しく明示されている
・従業員は、OJTや座学トレーニングを通じてそのスキルを身につけることができる
・従業員がどのスキルを持っているかは、その上司が決めることができる
・自分のチームに誰を入れるかは、マネージャー(またはその上司)が決める
・上のポジションになればなるほど、複数のプロジェクトを同時並行で持つ

このコンサルのやり方に比べて、日本企業は人ありきの業務設計をする。
「AさんはスキルBができるので業務Cを任せてみよう、だからうちはビジネスDを遂行できる」
(特に始まったばかりのベンチャーだとこの傾向が顕著)

だがうちは、欧米っぽい、ポジションありきの業務設計でいくべきだと思っている。
「うちの戦略はEというものだから、ビジネスDを推進したい。従って業務Cをこなす必要がある。スキルBができる人、ということで探してみると、Aさんがピックアップされた」

なぜかというと、次の理由が考えられる。

・地理的に離れており、しかも文化・言語などが異なるため、「AさんはBができるのでCを任せてみよう」といったあうんの呼吸が難しい
・規模が拡大するにつれ、次々に新しい経営課題が出て来、そこへの対処を迫られる。戦略からブレークダウンして人材要件が定義できると早めに求人活動やスキルトレーニングがスタートできる。いっぽう、人ありきの業務設計だと、ふさわしい人がいれば経営課題に対処できるという、基本的に運頼みの経営になってしまう


なので、コンサルでのやり方を踏襲しようと思っている。
ただ、うちはコンサルではないので、いくつかを修正する必要がある。

・「数か月程度のプロジェクト」は存在せず、プロジェクトは基本的には継続的なものになる。
・ここのところは、企業の規模や複雑性の増大に従って、チーム(部署)の分裂という形で対処する。(まるでアメーバが分裂するように)
・組織全体で必ずしも共通のスキルセットを定義できるわけではないことに注意する (例:マーケティングスキルは、プログラマに必要なのか?)
・(先日「現場に採用権を」という話を書いたように)比較的下のポジションから採用権を持たせた方が、やりがいが出る


とまぁ、こんな感じです。

まだこれから、日本側・フィリピン側パートナーとの話し合いを控えているので、
上記の考えは一人で突っ走っている気がしないでもないです。

ただ、ここらへんを考えていて、
すくなくとも業務設計・人事設計は、ベンチャーにおいてもコンサルが役立つんだなぁと思います。

「ベンチャーで役立つ、戦略コンサルのスキル」の話で書いたように、
例えばロジカルシンキングは起業してから1年間は役立たちません。
売れるもの見つけ、売る方法を見つけるには、
PDCAサイクルをいかに早く回すかの方がよっぽど大事です。

ただ、組織がふくらんでくると、組織に手を入れる必要が出てきます。
そして、この部分はPDCAサイクルが機能しないです。
例えば、自分の担当業務・ポジション・権限がくるくる変わったら、仕事に集中できず、トップへ不信感を抱くようになります。
だから、この業務設計・人事では、PDCAサイクルを早く回すことができません。

すると、ロジカルシンキングで間違い率を下げる努力が必要になります。
昔、ある師匠が戦略コンサルを辞め、ベンチャー向けコンサルをやっていたので、
「ベンチャーにコンサルのニーズってあるんですか?」 と聞いたら
「ある。ありまくり。そこらじゅうにあるよ。」と答えられたので、
僕は「???」だったんですが、
その秘密はおそらくこういうところにあるんでしょうねぇ、
なんて一人飛行機の中で考えていました。