DV男と戦う
真夜中、たばこを吸いに外に出ていたら、
男と女の痴話喧嘩が聞こえた。
何だろうって見に行くと、
女性が男性に暴力を振るわれていた。
近くにタクシーのおっちゃんもいて見てたんだけれど、
あわててどこかに走っていったから、
何だ僕しかいないのかって思って、止めに入った。
ちょっと怖かったけれど、
このまま見過ごしたら後できっと嫌な思いするだろうなって思った。
で、男性が女性の髪をつかんで、
むりやりマンションに連れ込もうとしていたから、
「ちょっと待ってください」
「嫌がっているじゃないですか」
「落ち着いてください」
ていって男の腕をつかんだ
男は、アメフトでいえばディフェンス、
僕よりも背が高くてごっつい。
「てめぇ誰なんだよ?」
「俺達夫婦なんだよ。お前関係あんのか?」
「法律知ってんのか? 訴えるぞ」
男は女性の腕を放し、
僕に胸張り合わせてガンを飛ばしてきた
・・・ こ、怖いっ
とか思いながらも、
とりあえずガンを飛ばし返す
その隙に、女性は路上に逃げていった。
・・・ やれやれ、これでやっと帰れる
そう思ったら、男が僕を突き飛ばした。
僕がよろよろっとよろけていると、
男は女性を追いかけていった
そして、今度は女性の髪をつかんでマンションの入口まで
引っ張ってきた
女性は泣き叫んでいる
「痛い! やめてぇ!」
「嫌だ、もうあの部屋に帰りたくない」
男は怒っている
「うるっせぇよ」
女性をひきずって、すごい迫力。
・・・ 本当に怖っ
とか思いながら、いちおうまた止めに入る。
でも怖いので、
今度は止めに入る腕にちょっと力が入っていない 笑
すると男は
「だからてめぇ誰なんだよ?」
「ぶっとばされてぇのかよ?」
「訴えるぞ」
怖いには怖いんだけど、
売られたケンカは買う派なので、僕の口も勝手に動く
「訴えればいいじゃないですか」
「嫌がっているじゃないですか」
それを聞いた男、また女性を離して
僕に近寄ってガン飛ばしてきた
怖ぇぇ・・・
今度こそ殴られるかな、と思っていたら、
後ろでキュイッて音がしてクルマが止まった。
振り返ると、タクシーから警察官が3人降りてきた。
ナーイス!
このときほど、日本の警察を頼もしく思ったことはない。
どうやら、最初に見ていたタクシーのおっちゃんが、
機転利かせて、
警察署までクルマを飛ばして、
警察官3人乗っけて帰ってきたようだ。
警棒持った警察官3人と、タクシーのおっちゃん、僕の5人に囲まれて、
さすがの男もたじたじになっている。
男は、免許証取られて、名前など色々取られていた。
警察はこれ以上2人に介入できないらしいが、
今後なにか刑事事件に発展したときの参考人として、
僕やタクシーのおっちゃんの連絡先を聞いてきた。
僕もおっちゃんも、素直に捜査に協力。
住所・名前を伝えながらも、まだ僕の足は緊張でぷるぷる震えていた。
おっちゃんが僕に言うには、
「ああいう奴に1人で立ち向かっちゃいけない」
「僕も昔立ち向かって、ケガしちゃった」
「ああいう奴は、ただでさえカッカしているところに、
周りから言われると余計カッカしちゃうから危険」
「こういうときは、絶対に警察を呼ばなきゃいけない」
なるほど、と思った。
まぁそのときは携帯電話を持っていなかったんだけれど、
それにしたって1人は確かに危険だ。
自分よりもデカい奴に襲われたら金的を蹴ることにしようと
前から決めていたけれど、
今日はそんな余裕は全然なかった。
おっちゃん、ナイス。
おかげで助かりました。
ありがとう。
こうやって、周りが連携し合うことで
防げる犯罪もあるんだろうなぁって
暖かい気持ちになりつつも、
DVのダンナに暴力振るわれていたその女性のことを考えると、
複雑な気持ちになった。
きっと、これからも暴力振るわれるんだろうなぁ。
もしかしたら今日も、
警察呼びやがってとか言われて怒られるんだろうなぁ
と思って、つらくなった。
DVは治らないから、早く別れた方がいいよ
とまでは言わなかったけれど、
その男の代わりに、僕やおっちゃん、警察官に謝っている彼女の姿を見ていて、
彼女の幸せを心から祈った。